2019年11月29日の建築学会北海道支部建築作品フォーラムにおいて、
司会者から質問があった件の説明です。
小屋群住居は、個室群住居とどう違うのかという質問がありました。
想定していなかった質問なので、正直なところ答えに窮しました。
ここで改めて考えをまとめてみようと思いブログにしました。
司会者が言う個室群住居とは、1970年前後に黒澤隆さんが発表したもので、
家族の関係性をいわば抽象化してプランニングに落とし込んでいくものです。
具体的には、家族の例えば夫婦の個室をそれぞれ独立したプライベート空間とし、
居間などの共通部分をパブリック空間と定義、その関係性を考察するものでした。
その後、昭和から平成の時代の中で家族の在り方とその多様性に対応するように、
建築領域よりはむしろ社会学の分野でより深化し展開した問題意識と考えています。
家族意識やいわゆるジェンダー論、上野千鶴子さんの女性学などの方向でしょうか。
黒澤隆さんの個室群住居は、抽象化した優れたプランニング論であったと思います。
一方、私の小屋群住居は、むしろ具象化でありデザイン方法論だと思っています。
日常生活が営まれるアノニマスな建築観察から発想したタイポロジ―で、建築的です。
例えば建築家なしの建築に見られるような長い時間をかけてつくられた群としての建築をはじめから仕掛けることによって、物語性を建築に与えることができると考えたのです。
幾世代もにわたり増築されてきた農家住宅を観察すると、物語を発見することができる。
そうした物語には豊かな人間の歴史が語られているものです。
そのプロセスを逆にさかのぼる。あえて初めに形をつくるアプローチがあると思います。
小屋群住居は、具体的な家族の風景を込めた住居単位(小屋)をつなげていくこと、
いわば具象を抽象的に構成するプロセスを建築化する作業です。
最近出会った言葉があって「歴史を模倣する」という言葉ですが、
これが妙に腑に落ちました。
模倣は、データを駆使するAIが得意な分野ですから、これからの時代に展開していく予感があります。
どなたか一緒に考えてくれる方がいらっしゃいましたら是非お声をかけてください。