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金曜日, 1月 14, 2022

小屋群住居A


 旭川の住宅「小屋群住居A」が最新号の「リプラン北海道135号」に掲載されています。平屋の補強コンクリートブロック住宅です。以下、紙面の文章。「北海道らしい家が欲しい」という内容のメールがNさんから届いた。「冬暖かく夏涼しいコンクリートブロックの家を建てたい」との熱い思いで、私にたどり着いたそうだ。後日、Nさんご家族全員で旭川から札幌の私の事務所に来ていただき、改めて話をうかがう。初めての話が心地よく耳に届く。その日は次に会う約束をし、札幌市内で完成したばかりのコンクリートブロック住宅を案内した。

まず土地探しから協力することになった。Nさんは建築に理解と興味と知識を持ち合わせており、敷地選びにもこだわりがあった。北海道らしさを求めながら絞り込んだいくつかの候補の中、起伏のある自然豊かな敷地を選択した。これは実は、難易度の高い敷地選択だったが、完成イメージは一番素晴らしいと、私も直感していた。

建設地は北海道の中心都市旭川市の一画、JR富良野線に沿って北に流れる美瑛川を見渡す小高い丘にある。前面道路から6~7メートルほど高低差があり、ナナカマドなどの原生林に覆われ、都市化された周辺と対照的な森の記憶を残している。

ここでつくる建築は、自然と対話する暖かい小屋にしたいと考えた。法規と計画に従い相当量の切土と樹木伐採をおこない、斜面の北側隣地境界線沿いに低く細長いコンクリートブロック外壁の平屋を配した。冬の風を受ける北面はコンクリートブロックを二重に積む。一方、敷地を取り囲む南面は道南杉板に着色した縦羽目板張りとする。プランは居間や個室という単位空間を「小屋群」に見立て、数珠つなぎに並べる連結型配置とした。廊下はない。すべての部屋から庭が見えるのがいい。

原始の森を切り拓き、平地をつくり建築空間を置く。通りから奥へ、街から森へ、公からプライベートへ、「北海道らしい家」の開拓者たちは森の奥深く潜入する。そこには時空を駆け巡り、大地の記憶と重なることができる暮らしが待っている。