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木曜日, 10月 20, 2022

CBは過去の素材としてではなく…

 週刊ブロック通信「ブロック造住宅の系譜」9月、10月をまとめて載せました。外皮として、鉄骨造やRC造と組み合わせた建築例です。たまたま無名教育施設と有名住宅の組み合わせになりました。どちらもブロックが他の選択肢がなく、風土に根差した建築材料として選ばれた時代です。時間は逆戻りしませんが、ブロックの復権の手掛かりになるかもしれません。




水曜日, 8月 24, 2022

32年前のマニフェスト

 週刊ブロック通信コラム、ブロック住宅の系譜8月は「32年前のマニフェスト」。今年1月JIAが募集した「私のマニフェスト」に応募した。マニフェスト=宣言は、現在の立ち位置を自ら表明するもので、ややもすれば後ろを振り返り懐かしさで一杯になるところを批判的に論じる。そうして、一歩一歩前進するのか、自然にズルズル後退するのを抵抗できているのかは不明。


32年前のマニフェスト

私の仕事場は、1985年に設計したブロック造の共同住宅の一角、1990年に設計事務所を開設しました。今年の夏休み中、私自身が当時書いた文章を読み返す機会があり、再録します。

設計作業の中で、建築を考える時、私は次の4つの事を大切にしています。第1はコストです。物には値段が付いているという意味で、建築と経済の強い結びつきを実感します。高い建築材料・製品ですべての部分をまかなうことは不可能ですから、様々な工夫が必要と感じます。コンクリートブロックの使用は、どこでも比較的安価で入手できるという理由によっています。工業規格製品や外国製品で安価なものの利用、手間のかかった古いものの再利用などを積極的に考えています。しかし、性能や機能を確保するためには、石やステンレス等の高価な建築材料も時として使用する心構えは忘れてはいけません。適材適所を心がけています。第2は、自然条件としての地域性です。北海道では冬場の雪と寒さ、敷地を含めた周辺の微地形を読み取ることを考えています。特に狭い敷地の場合は、慎重にアクセス・視線方向・風向・日照等を検討しておくべきだと考えています。北海道では高気密高断熱工法が容易になった今日、住宅を無配慮に敷地に置くだけの設計は許されません。また、北海道では冬を旨とするあまり、春から秋の大切な期間をぶざまに過ごすこともできません。一年を通じ積雪によるグランドレベルの上下変化を計算した断面設計を心がけたいものです。第3は、建築は極めて社会的な問題そのものです。公共建築が行政の公約や成果の対象としてだけではなく、街づくりのプログラムの根幹として重要なのと同様に、民間の住宅でも外観や共有空間に公共性を意識した設計を心がけるべきだと考えています。その意味で、二世帯住宅や共同住宅に見られるライフスタイルのプログラムをより社会的な問題として認識しておく必要があると考えています。第4、最後に私は何を表現したいのか、です。私自身は、表現者で同時に生活者です。建築を味わう者としての時間も大切なものと考えています。常に私の身体を通して表現されるスケール感・素材感等でありたい。広く世界から、また永い歴史の中から学び、私たちの生活の中で生かしてゆくことができれば素晴らしいと考えています。「創意に溢れた北の建築家たち・1991年・日建新聞社発行138頁より抜粋」

(山之内裕一/山之内建築研究所)


土曜日, 7月 30, 2022

住宅の増築の可能性

 月一のコラム「ブロック造住宅の系譜」7月25日号は、現在進行中の住宅増築について、フライング気味の投稿です。このところの建設資材価格変動の影響で予算通りに見積が整わない。上限をねらいギリギリの設定でスタートするものだから、どこかで無理がくる。クライアントもそのあたりは十分に理解しているので、様々なアプローチでトライアンドエラーを繰り返す時間を私も楽しんでいる。この計画案は、そうしたチャレンジの一例としてまとめてみたものです。


木曜日, 6月 23, 2022

週刊ブロック通信6月20日号

 今月のコラムです。きっかけは、エルクロッキー誌に掲載された横浜大さん橋設計者の建築家アレハンドロ・ザエラ・ポロの論文「the end of manners 」、作法の終焉というのだろうかパンデミック後の世界を論じている。ただ単に建築状況のみではなく、政治経済文化をひとくくりにした優れた批評。コロナ禍の時代が、建築に新しい変化を指し示す、というものだが。膨大な情報量と英文のため、更なる読み込みの必要を感じつつ一時休憩。そこで問題意識の近い方向にささやかな話題を探しコラムを書いた。いままで何気なく使われてきた言葉が他者に不快感を与えているということから、言い換えたりすることについて書いている。トイレを何の躊躇なく便所と言った昔、社会性に配慮し今は変化したことなど。



デザイナー銘板が付いた車


 先日、久しぶりに訪問したブロック住宅「小屋群住居O」。クライアントが快く迎えてくれた。ガレージで作業中ということで、一緒に雑談。黄色のパンダは、29年乗っているという。先日、車検を更新し2年また乗るのだという。走行距離は10万キロを少し超えたとのこと。鮮やかな黄色はコンクリートブロックのグレー色と良くマッチしている。ジュージアーロの銘板に感動した。もともと付いていたものかどうか、クライアントに確認するのを忘れていたが、デザイナーの名前を付けた車を私は他に知らない。


月曜日, 5月 23, 2022

蛇篭のある庭(garden with gabion)

 週刊ブロック通信523日号に、今年完成した住宅庭の土留めに蛇篭を使用した例を紹介しています。雪が消え木々が青々と芽吹く敷地周辺の自然に美しさと生命力を感じている。それと同じように感情移入できるような庭をつくりたいと思った。RCCB塀を使わない土留め「蛇篭」の採用はそうした理由によるもの。そして、実際に作ってみて初めて理解できることが、建築には必ずあります。

蛇篭のある庭

住宅庭の植込み擁壁を自然素材でつくりたいと考えた。住宅敷地は道路と最大700mmの高低差があり、また風致地区内にあるため3m以上の建物後退が求められていた。そこで建物外壁と道路との間に植栽帯、つまり植込みが計画された。植込みは、植栽と擁壁とで構成される。植栽は植物、だから季節ごとに様々な表情を見せ、時間とともに成長し時間を経て老いる。擁壁も植栽同様、時間とともに味わいが深まるようにしたいと考えた。植栽と同調する擁壁をイメージしたなかで、前回紹介したバルセロナの都市公園の例が浮かんでいた。バルセロナの例は、D10以上の異形鉄筋を縦横に組む直線的な構成。中詰石は地中海の石灰岩のように見えた。今回の蛇篭は、「パネル式ふとんかご」、工場生産されたユニットを現場で組み立て施工が比較的容易に可能だ。蛇篭は、一般的な土木材料で、地場に製造業者も存在している。中詰石は、花崗岩の砕石で、もちろん地元産。現場作業は、基礎根掘りから石詰めまで、使用機械は小型のバックホーのみ、天候に左右されず短期間で施工できた。中詰石に押されて柔らかく膨らむ蛇篭でつくる植込み擁壁は、敷地まわりの緑と同様に直線的ではない自然な雰囲気を住宅庭にもたらしている。(山之内裕一・山之内建築研究所)

 


金曜日, 4月 22, 2022

蛇篭(GABION)

 週刊ブロック通信4月号のコラムです。いつも心掛けているのは、ブロック住宅の系譜という「お題」の範疇でどれだけ遠くに行けるかということ。今回は、住宅の外構の取り組みの中で土木工事のアイテムである蛇篭を取り上げた。2010年、北海道の建築家協会(JIA)とバルセロナ建築協会の交流として10日間ほど現地に滞在した時に、バルセロナの建築家エンリック・マシップ・ボッシュ氏に薦められて見たものだ。

蛇篭 (じゃかご)

住宅は、建物だけ出来ても完成とは言えない。敷地内のあらゆる部分が整い、また家具や室内の雰囲気も大切で、それらが住まい手と共に時間をかけ醸成し初めて完成に至るもの。そこで今回は、敷地の雰囲気をつくる外構を取り上げてみたい。 敷地平面は、土地を覆う植栽とそれ以外のものとに分けられる。敷地断面が平坦な場合であってもわずかな土地の高低差を上手く取り入れた庭づくりは心地よいものだ。ましてもともと傾斜を有する敷地の場合、土地の段差を魅力的に活用した庭づくりは外構の醍醐味であり、広い意味でランドスケープと言う。

建築はランドスケープだ、とのコンセプトで外構と建築を融合させたスペイン・バルセロナの公園がある。市街地の集合住宅とその周辺を取込んだ都市公園の例で、そこで用いられた擁壁の素材と工法が私の目に焼き付いている。

日本流にいえば蛇篭(じゃかご)。石積擁壁を鉄筋フレームで囲う構造だ。実は、組積造の原点ともいうべき工法で、多様に進化してきた歴史がある。(「日本じゃかご協会」ホームページ参照。)代表的なものは、護岸工事など土木工事として、金網で石を包み固定した工法。自然石と金網、どちらが主役になるかによって形態が分かれるが、原理は同じ、自由に動こうとする石を金網が拘束する構造。この構造は、補強コンクリートブロック造と良く似ている。そして持続可能な、誰でもどこでも手にできる自然素材を活用した住宅の外構を考える有効な工法なのです。

(山之内裕一・山之内建築研究所)

金曜日, 3月 25, 2022

赤レンガの有用性

週刊ブロック通信3月21日号の「ブロック造住宅の系譜」コラムです。浦河教会の基壇部の煉瓦ワークについて書きました。


上のQRコードから週刊ブロック通信コラムがご覧いただけます。

浦河教会は、ちょうど先日、たくさんの来訪者の方たちにご覧いただいたところです。室内に入り皆様からは、ほっとできる、休まると言った感想をお聞きすることができました。

火曜日, 2月 22, 2022

建築は守り伝えるべき文化


今月の週刊ブロック通信に寄せて、ただいま大改修中の北海道庁旧本庁舎(通称:赤レンガ庁舎)で考えました。前回改修から50年が経過し、構造的な不安と機能的な不備を改善するための工事だそうです。驚くべきことに、過去には解体論もあったというのです。現在は国指定の重要文化財ですから、また札幌の街中に在って時計台や大通公園と並ぶ観光スポットとなっていますので、どれだけ維持費がかかろうと解体を考える人はいないでしょう。建築は守り伝えていく文化です。そのことをいま一度考えさせられる赤レンガ庁舎の大改修です。

 

金曜日, 1月 14, 2022

小屋群住居A


 旭川の住宅「小屋群住居A」が最新号の「リプラン北海道135号」に掲載されています。平屋の補強コンクリートブロック住宅です。以下、紙面の文章。「北海道らしい家が欲しい」という内容のメールがNさんから届いた。「冬暖かく夏涼しいコンクリートブロックの家を建てたい」との熱い思いで、私にたどり着いたそうだ。後日、Nさんご家族全員で旭川から札幌の私の事務所に来ていただき、改めて話をうかがう。初めての話が心地よく耳に届く。その日は次に会う約束をし、札幌市内で完成したばかりのコンクリートブロック住宅を案内した。

まず土地探しから協力することになった。Nさんは建築に理解と興味と知識を持ち合わせており、敷地選びにもこだわりがあった。北海道らしさを求めながら絞り込んだいくつかの候補の中、起伏のある自然豊かな敷地を選択した。これは実は、難易度の高い敷地選択だったが、完成イメージは一番素晴らしいと、私も直感していた。

建設地は北海道の中心都市旭川市の一画、JR富良野線に沿って北に流れる美瑛川を見渡す小高い丘にある。前面道路から6~7メートルほど高低差があり、ナナカマドなどの原生林に覆われ、都市化された周辺と対照的な森の記憶を残している。

ここでつくる建築は、自然と対話する暖かい小屋にしたいと考えた。法規と計画に従い相当量の切土と樹木伐採をおこない、斜面の北側隣地境界線沿いに低く細長いコンクリートブロック外壁の平屋を配した。冬の風を受ける北面はコンクリートブロックを二重に積む。一方、敷地を取り囲む南面は道南杉板に着色した縦羽目板張りとする。プランは居間や個室という単位空間を「小屋群」に見立て、数珠つなぎに並べる連結型配置とした。廊下はない。すべての部屋から庭が見えるのがいい。

原始の森を切り拓き、平地をつくり建築空間を置く。通りから奥へ、街から森へ、公からプライベートへ、「北海道らしい家」の開拓者たちは森の奥深く潜入する。そこには時空を駆け巡り、大地の記憶と重なることができる暮らしが待っている。