週刊ブロック通信5月23日号に、今年完成した住宅庭の土留めに蛇篭を使用した例を紹介しています。雪が消え木々が青々と芽吹く敷地周辺の自然に美しさと生命力を感じている。それと同じように感情移入できるような庭をつくりたいと思った。RCやCB塀を使わない土留め「蛇篭」の採用はそうした理由によるもの。そして、実際に作ってみて初めて理解できることが、建築には必ずあります。
蛇篭のある庭
住宅庭の植込み擁壁を自然素材でつくりたいと考えた。住宅敷地は道路と最大700mmの高低差があり、また風致地区内にあるため3m以上の建物後退が求められていた。そこで建物外壁と道路との間に植栽帯、つまり植込みが計画された。植込みは、植栽と擁壁とで構成される。植栽は植物、だから季節ごとに様々な表情を見せ、時間とともに成長し時間を経て老いる。擁壁も植栽同様、時間とともに味わいが深まるようにしたいと考えた。植栽と同調する擁壁をイメージしたなかで、前回紹介したバルセロナの都市公園の例が浮かんでいた。バルセロナの例は、D10以上の異形鉄筋を縦横に組む直線的な構成。中詰石は地中海の石灰岩のように見えた。今回の蛇篭は、「パネル式ふとんかご」、工場生産されたユニットを現場で組み立て施工が比較的容易に可能だ。蛇篭は、一般的な土木材料で、地場に製造業者も存在している。中詰石は、花崗岩の砕石で、もちろん地元産。現場作業は、基礎根掘りから石詰めまで、使用機械は小型のバックホーのみ、天候に左右されず短期間で施工できた。中詰石に押されて柔らかく膨らむ蛇篭でつくる植込み擁壁は、敷地まわりの緑と同様に直線的ではない自然な雰囲気を住宅庭にもたらしている。(山之内裕一・山之内建築研究所)
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