私たち建築家が何を考えて設計しているのかを多くの人に知ってもらいたい、との思いで書いている6月26日掲載の週刊ブロック通信「ブロック住宅の系譜」をご紹介します。
今回は「CB建築の講義・その三」で、南幌町「カスタマイズできる家」を題材に尺度や比例、遠近法などについて書いています。
CB建築の講義・三
私たちは、建築空間を五感で受け止めています。同時に建築空間に組み込まれた法則を知覚し、さまざまな効果を感じ取ります。今回は、そうした建築空間の法則について、形式と内容を考えます。
「カスタマイズできる家(本誌第二九九二号)」は、三棟連結プランの補強コンクリートブロック造平屋住宅です。母屋棟を中心に、両端にカーポート棟と小屋棟の三棟を直線状につなぐ配置です。一つの大きな屋根で覆うにではなく、人の住まいに程よい尺度(スケール)をもつ小屋根の組み合わせとしています。全体として、尺度(スケール)が分節されることで建築空間が人間の尺度(スケール)に寄り添う外観を意図しました。
室内では、高窓が特徴的です。冬場の太陽を母屋棟の中心に取り込むため、コンクリートブロック壁を南面にずらしました。そこでは遠近感(パースペクティブ)が生まれ、奥行きが強調されました。
壁体のコンクリートブロックは目地込み200mm×400mmの1:2の比例(プロポーション)を持ちます。屋根架構は、在来木造の455mmの寸法体系(モデュール)を持ちます。これらの倍数でつくられた室内全体には、整然とした印象が生まれています。
ここでは、尺度(スケール)、遠近感(パースペクティブ)、比例(プロポーション)、寸法体系(モデュール)、などの建築空間に重要な法則が存在し、住まいに心地よい効果を生んでいます。私たち建築家は、先人たちが発見・発明した多くの成果を学びながら個々の設計事例に役立てているのです。(山之内裕一/山之内建築研究所)