Powered By Blogger

土曜日, 7月 30, 2022

住宅の増築の可能性

 月一のコラム「ブロック造住宅の系譜」7月25日号は、現在進行中の住宅増築について、フライング気味の投稿です。このところの建設資材価格変動の影響で予算通りに見積が整わない。上限をねらいギリギリの設定でスタートするものだから、どこかで無理がくる。クライアントもそのあたりは十分に理解しているので、様々なアプローチでトライアンドエラーを繰り返す時間を私も楽しんでいる。この計画案は、そうしたチャレンジの一例としてまとめてみたものです。


木曜日, 6月 23, 2022

週刊ブロック通信6月20日号

 今月のコラムです。きっかけは、エルクロッキー誌に掲載された横浜大さん橋設計者の建築家アレハンドロ・ザエラ・ポロの論文「the end of manners 」、作法の終焉というのだろうかパンデミック後の世界を論じている。ただ単に建築状況のみではなく、政治経済文化をひとくくりにした優れた批評。コロナ禍の時代が、建築に新しい変化を指し示す、というものだが。膨大な情報量と英文のため、更なる読み込みの必要を感じつつ一時休憩。そこで問題意識の近い方向にささやかな話題を探しコラムを書いた。いままで何気なく使われてきた言葉が他者に不快感を与えているということから、言い換えたりすることについて書いている。トイレを何の躊躇なく便所と言った昔、社会性に配慮し今は変化したことなど。



デザイナー銘板が付いた車


 先日、久しぶりに訪問したブロック住宅「小屋群住居O」。クライアントが快く迎えてくれた。ガレージで作業中ということで、一緒に雑談。黄色のパンダは、29年乗っているという。先日、車検を更新し2年また乗るのだという。走行距離は10万キロを少し超えたとのこと。鮮やかな黄色はコンクリートブロックのグレー色と良くマッチしている。ジュージアーロの銘板に感動した。もともと付いていたものかどうか、クライアントに確認するのを忘れていたが、デザイナーの名前を付けた車を私は他に知らない。


月曜日, 5月 23, 2022

蛇篭のある庭(garden with gabion)

 週刊ブロック通信523日号に、今年完成した住宅庭の土留めに蛇篭を使用した例を紹介しています。雪が消え木々が青々と芽吹く敷地周辺の自然に美しさと生命力を感じている。それと同じように感情移入できるような庭をつくりたいと思った。RCCB塀を使わない土留め「蛇篭」の採用はそうした理由によるもの。そして、実際に作ってみて初めて理解できることが、建築には必ずあります。

蛇篭のある庭

住宅庭の植込み擁壁を自然素材でつくりたいと考えた。住宅敷地は道路と最大700mmの高低差があり、また風致地区内にあるため3m以上の建物後退が求められていた。そこで建物外壁と道路との間に植栽帯、つまり植込みが計画された。植込みは、植栽と擁壁とで構成される。植栽は植物、だから季節ごとに様々な表情を見せ、時間とともに成長し時間を経て老いる。擁壁も植栽同様、時間とともに味わいが深まるようにしたいと考えた。植栽と同調する擁壁をイメージしたなかで、前回紹介したバルセロナの都市公園の例が浮かんでいた。バルセロナの例は、D10以上の異形鉄筋を縦横に組む直線的な構成。中詰石は地中海の石灰岩のように見えた。今回の蛇篭は、「パネル式ふとんかご」、工場生産されたユニットを現場で組み立て施工が比較的容易に可能だ。蛇篭は、一般的な土木材料で、地場に製造業者も存在している。中詰石は、花崗岩の砕石で、もちろん地元産。現場作業は、基礎根掘りから石詰めまで、使用機械は小型のバックホーのみ、天候に左右されず短期間で施工できた。中詰石に押されて柔らかく膨らむ蛇篭でつくる植込み擁壁は、敷地まわりの緑と同様に直線的ではない自然な雰囲気を住宅庭にもたらしている。(山之内裕一・山之内建築研究所)

 


金曜日, 4月 22, 2022

蛇篭(GABION)

 週刊ブロック通信4月号のコラムです。いつも心掛けているのは、ブロック住宅の系譜という「お題」の範疇でどれだけ遠くに行けるかということ。今回は、住宅の外構の取り組みの中で土木工事のアイテムである蛇篭を取り上げた。2010年、北海道の建築家協会(JIA)とバルセロナ建築協会の交流として10日間ほど現地に滞在した時に、バルセロナの建築家エンリック・マシップ・ボッシュ氏に薦められて見たものだ。

蛇篭 (じゃかご)

住宅は、建物だけ出来ても完成とは言えない。敷地内のあらゆる部分が整い、また家具や室内の雰囲気も大切で、それらが住まい手と共に時間をかけ醸成し初めて完成に至るもの。そこで今回は、敷地の雰囲気をつくる外構を取り上げてみたい。 敷地平面は、土地を覆う植栽とそれ以外のものとに分けられる。敷地断面が平坦な場合であってもわずかな土地の高低差を上手く取り入れた庭づくりは心地よいものだ。ましてもともと傾斜を有する敷地の場合、土地の段差を魅力的に活用した庭づくりは外構の醍醐味であり、広い意味でランドスケープと言う。

建築はランドスケープだ、とのコンセプトで外構と建築を融合させたスペイン・バルセロナの公園がある。市街地の集合住宅とその周辺を取込んだ都市公園の例で、そこで用いられた擁壁の素材と工法が私の目に焼き付いている。

日本流にいえば蛇篭(じゃかご)。石積擁壁を鉄筋フレームで囲う構造だ。実は、組積造の原点ともいうべき工法で、多様に進化してきた歴史がある。(「日本じゃかご協会」ホームページ参照。)代表的なものは、護岸工事など土木工事として、金網で石を包み固定した工法。自然石と金網、どちらが主役になるかによって形態が分かれるが、原理は同じ、自由に動こうとする石を金網が拘束する構造。この構造は、補強コンクリートブロック造と良く似ている。そして持続可能な、誰でもどこでも手にできる自然素材を活用した住宅の外構を考える有効な工法なのです。

(山之内裕一・山之内建築研究所)

金曜日, 3月 25, 2022

赤レンガの有用性

週刊ブロック通信3月21日号の「ブロック造住宅の系譜」コラムです。浦河教会の基壇部の煉瓦ワークについて書きました。


上のQRコードから週刊ブロック通信コラムがご覧いただけます。

浦河教会は、ちょうど先日、たくさんの来訪者の方たちにご覧いただいたところです。室内に入り皆様からは、ほっとできる、休まると言った感想をお聞きすることができました。

火曜日, 2月 22, 2022

建築は守り伝えるべき文化


今月の週刊ブロック通信に寄せて、ただいま大改修中の北海道庁旧本庁舎(通称:赤レンガ庁舎)で考えました。前回改修から50年が経過し、構造的な不安と機能的な不備を改善するための工事だそうです。驚くべきことに、過去には解体論もあったというのです。現在は国指定の重要文化財ですから、また札幌の街中に在って時計台や大通公園と並ぶ観光スポットとなっていますので、どれだけ維持費がかかろうと解体を考える人はいないでしょう。建築は守り伝えていく文化です。そのことをいま一度考えさせられる赤レンガ庁舎の大改修です。

 

金曜日, 1月 14, 2022

小屋群住居A


 旭川の住宅「小屋群住居A」が最新号の「リプラン北海道135号」に掲載されています。平屋の補強コンクリートブロック住宅です。以下、紙面の文章。「北海道らしい家が欲しい」という内容のメールがNさんから届いた。「冬暖かく夏涼しいコンクリートブロックの家を建てたい」との熱い思いで、私にたどり着いたそうだ。後日、Nさんご家族全員で旭川から札幌の私の事務所に来ていただき、改めて話をうかがう。初めての話が心地よく耳に届く。その日は次に会う約束をし、札幌市内で完成したばかりのコンクリートブロック住宅を案内した。

まず土地探しから協力することになった。Nさんは建築に理解と興味と知識を持ち合わせており、敷地選びにもこだわりがあった。北海道らしさを求めながら絞り込んだいくつかの候補の中、起伏のある自然豊かな敷地を選択した。これは実は、難易度の高い敷地選択だったが、完成イメージは一番素晴らしいと、私も直感していた。

建設地は北海道の中心都市旭川市の一画、JR富良野線に沿って北に流れる美瑛川を見渡す小高い丘にある。前面道路から6~7メートルほど高低差があり、ナナカマドなどの原生林に覆われ、都市化された周辺と対照的な森の記憶を残している。

ここでつくる建築は、自然と対話する暖かい小屋にしたいと考えた。法規と計画に従い相当量の切土と樹木伐採をおこない、斜面の北側隣地境界線沿いに低く細長いコンクリートブロック外壁の平屋を配した。冬の風を受ける北面はコンクリートブロックを二重に積む。一方、敷地を取り囲む南面は道南杉板に着色した縦羽目板張りとする。プランは居間や個室という単位空間を「小屋群」に見立て、数珠つなぎに並べる連結型配置とした。廊下はない。すべての部屋から庭が見えるのがいい。

原始の森を切り拓き、平地をつくり建築空間を置く。通りから奥へ、街から森へ、公からプライベートへ、「北海道らしい家」の開拓者たちは森の奥深く潜入する。そこには時空を駆け巡り、大地の記憶と重なることができる暮らしが待っている。


金曜日, 12月 31, 2021

2021年の締め、2022年の始め

 パンデミックの影響により変化する日常、その中で顕在化する様々な事柄に向かい合う日々でした。北海道を拠点とする建築家として最近考えていることを載せています。


土曜日, 12月 18, 2021

浦河教会の記事

 浦河教会新築工事の記事が、業界紙の北海道建設新聞に掲載されました。


月曜日, 11月 22, 2021

成果のリサイクル

 週刊ブロック通信・令和3年11月22日号に、ブロック住宅の系譜のコラムが載った。

今年、日本建築学会構造分野での発表を経験して感じたことがある。コンクリートブロックという古くからあり、かつては建築家が必ずと言っていいほど使用した工法素材が、現在ほとんど顧みられない。研究や施工そして設計の各分野において、それぞれの分野を横断的に見ていくならば発掘すべき成果が埋もれているように感じている。過去の膨大な成果の中から古くて新しい成果が見つけられるかも知れない。ほんの少しの新規性が見つけられることを期待したい。私自身も、そうした視点で過去の設計事例を見直してみたいと思っている。

金曜日, 10月 22, 2021

庭づくり3年と人新世

 今月の「週刊ブロック通信」に寄せた一文です。3年前、原生林(に見える)敷地に手を入れ(開拓し)平坦地を作り(開発行為申請の許可に半年)人間の住まいを建て、今年ようやく庭を完成(植生は未完成)させた。人間の側(人工)と原生林の側(自然)に少しの隙間もなく連続している。全てが人工であり全てが自然でもあって、境界がないことを感じている。まさに人新世だと思う。そのようなことを書き記した。興味ある方は、下のQRコードから週刊ブロック通信のサイトへどうぞ。

水曜日, 10月 20, 2021

フィンランドからのサッシ

 ピヒラウインドウという名のサッシです。断熱性能の良い木製サッシです。特徴は、内開きで室内から開閉や清掃などのメンテナンスが可能です。LOW-Eペアガラスを内部に、外部はアルミ枠のシングルガラスで、間にブラインドが納まっている。内外サッシとブラインドが同時に内開きする。ブラインドは、外部アルミサッシがシングルガラスのため日射遮蔽効果が高い。

良いことずくめなのですが、今年に限ってはパンデミックのあおりを受け納期が約半年かかった。とはいえ、クライアントに待ってよかったと言わせたほどの優れものです。




火曜日, 10月 05, 2021

ハイサイドライトの平屋(週刊ブロック通信9月)

 週刊ブロック通信9月のコラムは「ハイサイドライトの平屋」です。住宅中心に自然光を取込むため高所に設けた窓をハイサイドライトと言います。自然光は高所から取り込むほど光の量が多く、室内を明るく照らし出すことができます。ハイサイドライトの第一番の役目です。

窓から取り入れるのは明るさだけではありません、熱も大量に取り込みます。太陽熱ダイレクトゲインは、温熱計画のスタートになります。そうして取込む熱エネルギーを熱容量の大きいコンクリートブロックに蓄え、穏やかな室内環境をつくるのがこのハイサイドライトのもう一つの役目です。週刊ブロック通信のWEBサイトもご覧ください。

https://block-tsushin.co.jp/concrete_news/genre/block_house


土曜日, 8月 28, 2021

週刊ブロック通信8月23日号

 月一のコラムです。今年から週刊ブロック通信がWEBサイトで公開されています。私のこのブログは新しい伝え方を考える時期になっている。

ともあれ「8月23日号」は「集まり部屋」で書いた。集まり部屋とは、蒸暑地域であれば屋外になる場所や行為が室内に取り込まれてしまう、厳しい気候風土で形成された北海道独自の住様式の中心になる場所のことだ。今回紹介の住宅では、玄関、物干し場が取込まれています。



木曜日, 5月 27, 2021

住宅の庭づくり

 

週刊ブロック通信5月24日号に掲載のコラム「住宅の庭づくり」です。今回は、庭が主役で背景に住宅があります。そもそも建築の外観は何かの背景で、特に街歩きの他者にとっては単なる目印。知らない街を巡り歩くときなどは、街の背景として建築を私たちは意識している。

今回の住宅の庭づくりは、庭から周囲の住宅景観をどう眺めるのかあるいは眺めないようにするのかといった、庭からの眺めづくりだった。一番大切な背景は自身の住宅になる。

月曜日, 5月 17, 2021

素材研究:コルテン鋼



 板厚4.5mmのコルテン鋼板を手に取ってみている。コルテン鋼は、表面の錆が内部のサビの進行を防ぐ耐候性鋼。内部はどのようになっているのか?グラインダー掛けをしてみたところ、なんとピカピカの地金が現れた。いろいろ使いたいと思わせる魅力ある素材だ、と私は思う。

月曜日, 5月 03, 2021

15本のバラと1軒のレゴの家

5メートル程度の竹数本から、16本の一輪挿しを作りバラを挿してひな壇上に並べた。竹は和、バラは洋の象徴として考えた。緑の竹と赤い花の対比も美しいと思った。ただ1本のバラはレゴの家に置き換えた。木に竹を接ぐとは「ちぐはぐで調和がとれていない事のたとえ」であるが、建築家の仕事は、社会の様々な局面でまさに調和がとれるかどうかのギリギリのところで成り立っているということを表現したかった。枯れ木に花を咲かせる翁の心意気でもある。実は20年以上前のまだ多くの企業が芸術文化活動をサポートしていた頃の建築家の展覧会に出品したもの。私の建築に対する考え方は今も変わらない。

 

金曜日, 4月 30, 2021

庭工事





「 美しが丘の家」で庭工事が始まっている。住宅の南東角を庭に充てた配置であるから、日射取得を有効にするため適度な高さに樹木は抑えておかなければならない。15年前から個の庭を手掛けてくれている政村庭園(政村さん)が手を入れてくれた。道路に伸びた枝と隣家に伸びた枝を伐採した。もっとおおらかであってほしいと思うのだが緑は他者にとり時として迷惑になることもある。近所の乗馬クラブの馬の様子が見える、そんな環境だ。そして木製ルーバー塀も年月を経てちょうどよく風化を受け入れてすっかり貫禄が出てきた。良い感じ。


水曜日, 4月 21, 2021

ウッドショックはブロックが救う?

いまコロナ禍で懸念されているウッドショック。海外からの木材流通が不足して国内単価が上昇している。ならば一時、コンクリート系へシフトしてはいかがかという現実的な提案。助っ人でかまわない、コンクリートブロックを見直す機運になればとの思いがある。