10年前掲載誌に書いた「土壌蓄熱床暖房システムの家」の説明文を再録する。
美唄の家は、「眺め」がキーワードの住宅です。敷地は、北側に池をもつ自然豊かな公園に接しています。計画にあたり配置は、敷地の北側に住宅を南半分は庭を配し、南北両方向への「眺め」をいかに獲得するかを目指しました。
いつも住宅設計では、随所に開口部を設け、外の風や光を取り込み、室内が自然とともに呼吸したいと考えています。ここでは、断熱・気密性の高い北海道の住宅だからこそ、一日中さまざまな角度から光がまわり、暖房や換気と同じく「眺め」が良好であることが、大切だと考えました。
この想いを実現するため、内部に二つのヴォイド(吹抜け)をつくり、「眺め」を視覚化する場所としています。一つ目は玄関ホールです。ホール正面、ヴォイド下部に地窓を設けました。地窓は、床からの高さを目線までとし、視線を外部の坪庭に導きます。階段を2階に上がっていくと、窓から公園の緑が室内に入ってきます。窓前のテラスからは、池の全体を見渡すことが可能で、テラスは外観のアクセントになっています。
「眺め」を大切にした住宅ということが、外部の誰の目にもわかるのです。
二つ目のヴォイドは、居間・台所・食堂のヴォイドです。北には食堂前の庭があり、ここから入る朝日を浴びながら朝食をとる。また南は居間から庭がひろがり、家事をしながら夕日を眺めることもできます。「眺め」が開放感をもたらし、自然の時間の流れをいつも感じながら生活できる、素晴らしい空間です。
こうした室内いたるところからの「眺め」を実現できたのは、配置計画とヴォイド(吹抜け)の力によるものですが、外観のシンプルな構成や、徹底した無垢材・自然素材の使用、また電気熱源土壌蓄熱方式の床暖房システム(サーマスラブ)をはじめとするオール電化、そして外断熱仕様など、ハード面の充実が鍵になったと考えています。