二重積でもなくキャビティウォールでもない。正しくは、「コンクリートブロック造二重壁工法」という。1970年代後半に成立した工法を振り返る。
水曜日, 12月 06, 2023
日曜日, 10月 29, 2023
張弦梁トラス
月一で寄稿している週刊ブロック通信の紙面がA4サイズから約二倍大のタブロイド版に更新され、見開きで一般紙片面サイズになり、紙質も一般紙同様のいわゆる新聞紙になった。
10月23日号は、次号からの助走とすべく今までの10年100回の連載を振り返り主な画像を1枚選び並べた。「CB建築の講義・六」は、張弦梁トラスを用いた音楽アトリエを併設した住宅を題材に、敷地の持つ力について述べている。4×4.5間(7.28m×8.19m)の無柱空間をリーズナブルにつくるため採用した架構で、梁、束材に松集成材を用いM27のスチール弦材で締めるのが特徴。今回の採用は、開発者(ATA)と直接やり取りでき構造架構がより身近でカジュアルなものとして感じられたことが大きい。
火曜日, 9月 05, 2023
火曜日, 7月 25, 2023
いもとやぶれの積層感
週刊ブロック通信コラムへの寄稿です。補強CB造は、縦横のコンクリートブロックを鉄筋補強する組積造ですが、表面上目地が縦方向に通る「いも」と、縦目地が途切れる「破れ」に大きく分かれる。私は、施工の分かりやすさを優先して「いも」を多用している。施工が丁寧にできるし、なにより単価も抑えられる。また「破れ」の意匠上の面白さは、出隅の組手部に意識的に用いている。今回は、コンクリートブロック造の積層感について書いています。
水曜日, 7月 19, 2023
藻岩下の家・再訪
藻岩下の家(1996年竣工)へ、しばらくぶりの訪問。設備のメンテナンスに同行した。藻岩山原生林に隣接する敷地は、27年前と変わらない。木製サッシの再塗装が必要だがクライアントの自力施工で可能である。先日、このあたりに熊が出没してニュースになった。窓から子熊を目撃したというクライアントの話を聞いた時、原生林の自然に対峙して丸く囲い込んだ人工空間で暮らしを守るという、設計コンセプトがけっして大げさではなかったことを確認したのだった。
火曜日, 7月 11, 2023
木曜日, 7月 06, 2023
100mの塔(水戸アートタワー)
6月の上旬、 水戸芸術館を訪問。目的は、会期末が迫った展覧会「磯崎新ー水戸芸術館を創る」を観るため。2階の展示ホールに、水戸芸術館のシルクスクリーン、水戸芸術館の設計資料等、短時間では十分な理解ができないほどの展示物が並んでいる。美術館、演劇ホール、等の文化施設が中庭を囲むように配され、その一端にシンボルとしての塔がある。水戸アートタワーと称されるチタンパネルの記念塔は、高さ100メートル。水戸市制百周年の記念として1990年に竣工。正四面体を28個重ねた形状は、ブランクーシの無限柱に着想を得ているという。
庭からタワーを見上げるタワー1階ホールにある建築模型
展示「震」ジョイント部の構造原寸断面図
水戸芸術館HPペーパークラフト設計図による山之内自作模型復習用(1/400)
月曜日, 7月 03, 2023
尺度、遠近感、比例、寸法体系
私たち建築家が何を考えて設計しているのかを多くの人に知ってもらいたい、との思いで書いている6月26日掲載の週刊ブロック通信「ブロック住宅の系譜」をご紹介します。
今回は「CB建築の講義・その三」で、南幌町「カスタマイズできる家」を題材に尺度や比例、遠近法などについて書いています。
CB建築の講義・三
私たちは、建築空間を五感で受け止めています。同時に建築空間に組み込まれた法則を知覚し、さまざまな効果を感じ取ります。今回は、そうした建築空間の法則について、形式と内容を考えます。
「カスタマイズできる家(本誌第二九九二号)」は、三棟連結プランの補強コンクリートブロック造平屋住宅です。母屋棟を中心に、両端にカーポート棟と小屋棟の三棟を直線状につなぐ配置です。一つの大きな屋根で覆うにではなく、人の住まいに程よい尺度(スケール)をもつ小屋根の組み合わせとしています。全体として、尺度(スケール)が分節されることで建築空間が人間の尺度(スケール)に寄り添う外観を意図しました。
室内では、高窓が特徴的です。冬場の太陽を母屋棟の中心に取り込むため、コンクリートブロック壁を南面にずらしました。そこでは遠近感(パースペクティブ)が生まれ、奥行きが強調されました。
壁体のコンクリートブロックは目地込み200mm×400mmの1:2の比例(プロポーション)を持ちます。屋根架構は、在来木造の455mmの寸法体系(モデュール)を持ちます。これらの倍数でつくられた室内全体には、整然とした印象が生まれています。
ここでは、尺度(スケール)、遠近感(パースペクティブ)、比例(プロポーション)、寸法体系(モデュール)、などの建築空間に重要な法則が存在し、住まいに心地よい効果を生んでいます。私たち建築家は、先人たちが発見・発明した多くの成果を学びながら個々の設計事例に役立てているのです。(山之内裕一/山之内建築研究所)
月曜日, 5月 22, 2023
建築家のいい話を寄稿
私たち建築家が何を考えて設計しているのかを一般の方に知ってもらいたい、との思いで書いています。CB建築講義の第二回目は、私たちが建築空間をどう受け止めているか、視覚をはじめとした五感で受け取る空間と心の関係性について考えます。私たちは、みる・きく・かぐ・さわる・あじわうという五感で知覚される多くの情報を瞬時にしかも体系的にとらえ、建築空間を受け止めています。そして建築家は、長い歴史の中で建築空間の知覚構造を理解し、同時に建築空間の法則を設計行為として、今も発明し発見し続けています。
月曜日, 5月 01, 2023
コアドライとCLT
連休前の4月27日、先月HOBEAフォーラムで木質について講演した北海道林産試験場の大橋義徳さんを訪ねた。カラマツ材コアドライ、トドマツとカラマツのCLT、最適な塗装、などなどデータを取りつつ経過観察している実験棟(北海道CLTパビリオン:遠藤アトリエ設計)などを見せていただく。コアドライは、伐採期にある北海道産カラマツ人工林材を柱材として利用するためのねじれや割れを防止する乾燥技術で、北海道林産試験場が主導して開発した。こうした地元産木材を北海道で設計する我々が日常的に使えるようになれば良いのだが。
左がコアドライによる製材。中央と右は従来の乾燥材で割れが生じる。北海道CLTパビリオン~設計は遠藤アトリエ(上:内部、下:外観~向かって右はトドマツ、左はカラマツを使い分けて経年変化を検証する、実験棟)水曜日, 4月 26, 2023
週刊ブロック通信4月24日号に寄稿しています。
週刊ブロック通信4月24日号へ、「CB建築の講義・その1」を寄稿しました。私が建築設計するときに何をどのように考えているのか、をはっきりと伝えたい。それが講義という形式になりました。私は講義は対話(ダイアローグ)だと思います。ちょっと上から目線に思われるかもしれませんが、そうではありません。一方的ではなく、様々な意見に耳を傾けていくことが考えを深めることになります。
今回、建築の原型としてのシェルターは人との関係性によって大きさなどが最適化される、ことを述べました。つまり人との関係性をどう作るかで、大きさなどの設計が決まるのですね。
CB建築の講義・その一
前回、建築は床・壁・屋根でできていて、生命と財産を守るシェルターだと学びました。改めてシェルターを辞書で引くと「群れの保護が原義で、避難所、隠れ場、小屋、住まい、バス停、防空壕」です。また類似語のシェルは「堅い外皮が本義で、貝殻、外殻、局面板」で機能と構造のイメージが浮かびます。ここで私が設計した二つの具体例、規模の小さな住宅建築と規模の大きな公共建築の例で比較考察してみましょう。「僕の部屋」は面積8.5㎡、ベッドと机が置いてある子供室です。自然光は入りますが不可視で遮音性能があるガラスブロック壁で仕切られています。常に他の家族からプライバシーが守られている極私的な場所(シェルター)です。ここでは帰宅した子供が例外なく落ち着くことができます。他方「札幌市中央図書館アトリウム」は天井高9.1mで256.2㎡の面積です。図書館を訪れる市民があふれています。隣接する公園を眺め、壁と天井のガラスからの自然光に溢れた光景に非日常の喜びを感じられる場所(シェルター)です。大きなアトリウムが私たちの心に与えるものと小さな子供室のそれ、つまり大小の異なるシェルターのそれぞれが人の心に響くものの違いに私たちは気づきつつ、生活しているのです。ではどのように響いているのか、何がそうしているのか、という考察は次回のお楽しみに。(山之内裕一・山之内建築研究所)
木曜日, 4月 20, 2023
薪ストーブの知らせが施主から届いた
桜が咲き春を迎えた北海道、冬の半年間活躍した薪ストーブの情報を施主が寄せてくれた。
数年前に薪ストーブを導入した施主から、その後の使用状況を知らせるメールが届きました。この住宅では、おおむね9月から4月いっぱい薪による全館暖房を実施しているという。ひと冬の薪の使用量は3タナ分の丸太(1タナは地元の出荷単位のことで約0.5立米)だという。
この丸太をチェーンソーで35㎝にカット後、縦に割って薪にする。使用している薪ストーブのサイズと燃焼時間との兼ね合いで薪の長さを決めた。薪の火は、一度消すと着火に手間がかかるので昼間は火を絶やさないのだとか…
月曜日, 4月 17, 2023
月曜日, 4月 03, 2023
山の手集合住宅・1991年
多少の積雪はいいじゃないかと。透明ガラス屋根に覆われた屋外階段は、開放的な共有空間の中心。私が独立した年に、仕事がないだろうから一緒にやろうと、先輩の建築家・中井仁実(よしみ)さんから誘っていただいた。俺と協働だけど、お前の作品でいいよと。30数年後の今も記憶に残る仕事です。
火曜日, 3月 21, 2023
CB建築の学習(週刊ブロック通信3月20日号)
木曜日, 3月 02, 2023
月曜日, 2月 20, 2023
秋田でコンクリートブロックを語る
週刊ブロック通信2月20日号に「秋田でコンクリートブロックを語る」を載せています。
秋田でコンクリートブロックを語る
昨年末、コンクリートブロック建築を通じて地域へ関わりを深めたいと考えていた矢先に、秋田での講演会が決まった。声をかけてくれたのは、JIA(日本建築家協会)東北支部秋田地域会代表で地元能代市在住の建築家・西方里見さん。全国一を誇るスギ人工林資源を背景とし、秋田県内をはじめ全国各地で性能重視の木造建築設計で活躍している、売れっ子の建築家。講演打診を受けた時、かつて聞いていた「コンクリートブロックでつくる住宅を、うちの若手設計者は知らない」との言葉を思い出し、意図を一瞬に理解。そして「異文化建築、北海道のCB造住宅」というお題が示されると理解が確信に変わった。
建築は文化の手段、かつてルイス・カーンは語ったという。それに倣い、異建築は異文化の手段、と言える。
ともあれ私は北海道のコンクリートブロック住宅を他の地域に伝える良い機会を得た。現在、北海道はコンクリートブロックの王国ではないが、一時期、官民挙げて王国を夢見た歴史があり、そのことも伝えた。当初の目的、ブロックを通じて地域へのかかわりを深める経験ができたのは良かった。講演終了後、西方さんの案内で、秋田・能代市を巡った。能代は古くから良質な木材生産地で、生育から伐採、運搬と加工、地域の一貫した基幹産業を誇る林業の街。なかでも驚いたのは能代港。古くは北前船で良質の木材を北海道へ積み出していた。現在は、隣国・中国への輸出港として大量の丸太がストックされている。遠浅の海には海上風力発電タワーが林立している。人口6万の地方都市で地域の循環に役立つ持続可能な素材・工法と真正面から立ち向かっている西方里見さんの姿がまぶしく見えた。その姿は、全国各地で手段は異なりながらも同じように奮闘する多くの建築関係者に勇気を与えるだろう。(山之内裕一/山之内建築研究所)
木曜日, 2月 16, 2023
木曜日, 1月 19, 2023
日本海・能代港の洋上風力発電
秋田県の米代川河口の街、能代市で洋上風力発電を見た。古くから秋田杉の集散地として栄えた街で、港には秋田杉の丸太が山積みされている。定期的に運搬船が入港し中国へチップ原料として輸出される。能代は風力発電に適した風が吹く場所で、そのため海に面し江戸時代から続く杉の防風林が数十キロにおよぶ。今後、洋上風力発電はさらに大規模につくられる予定だ。再生可能エネルギーと木材産業、ここには日本の多くの街にはないカーボンニュートラルな街の姿がある。