札幌市の中心部、大通り公園の北側に位置する市民会館の前を通った。すでに解体工事が始まり、大ホール客席の大屋根の鉄骨トラスが露出している。この建物には、思い出がある。40年前のこと。高校三年生を送り出す予餞会(よせんかい)がここであった。全校生徒が集い、歌や寸劇、楽器演奏に興じた。当時、私は文化委員長で総合プロデューサー役。とにかく事故なく時間通り進行させるのが仕事だったが、終わってみると終了予定時刻を2時間オーバーしていた。私は役目を全うできなかったことを恥じ、罰の悪い思いでいたのだが。学校も施設も、のんびりしていたようだ。終了後、食堂で担当の教師からひとことあっただけで済んだのだ。薄暗い舞台袖で、小言をいいながら反射板や吊物、緞帳などの操作をしてくれていたプロの職員さんの笑顔が今でも目に焼きついている。しかし、もうこの場所を通るたびに思い出すことはないだろう。建物や風景のイメージは、いつも個人的な記憶を支えているものだから。
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