「地下鉄に乗って」という映画を観た。浅田次郎の原作で、過去へタイムスリップする物語だ。主人公が地下鉄のホームで出会うかつての恩師の存在感が目に焼きついていた。キャストの中に、田中泯の名前を見つけた。あの舞踏家の泯さんである。30年ほど前、竹山実さんの札幌アトリエインディゴで、舞踏を観た鮮烈な記憶がよみがえった。局所を包帯でぐるぐる巻きにしただけのほとんど全裸で踊るという、それまで見たこともない前衛舞踏であった。その数日後、たしか市民会館でのワークショップで再会した。偶然、トイレで隣り合わせになり言葉を交わした他愛もない記憶。私の頭の中もタイムスリップしてきた。小説や映画や建築、人間の想像力ほど興味深く、感動を呼ぶものはない。
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