クライアントにとって敷地選びは楽しみでありまた困難なもの。ここでは住宅を建てる際の敷地を読み解くいくつかの手順、それも誰でもできる簡単な分析手法を述べる。
まず、地図や写真は必須。事前にグーグルマップやストリートビューで押さえる。不動産屋が公開している場合もあるので準備しておくのは言うまでもない。
敷地に乗り込んだら、目を凝らして観察する。写真を撮りその場で印象を書き留めておく。車が止まっているとか学校帰りの子供たちが歩いているなど。ほとんどの場合その現場メモがその後を決める。
まず北を探す。これは真北設定されたiPhoneアプリが便利。一日の太陽の動きを知る。緯度も同時に知ることができるから夏至冬至の南中時太陽高度もわかる。次に敷地の傾斜をみる。道路の傾斜は縁石に置いたiPhoneで簡易測定する。隣家の影の方向や範囲、風向きや木々の枝ぶりなどを記録する。観察した日時も忘れずに。
デスクに戻ると私の場合、敷地図に5~6メートルグリッドをのせてみる。そして現場メモや撮影した写真を見ながらグリッドひとつひとつを板チョコのひとやまのように割り味わいその違いを評価していく。評価軸はシンプルに、庭や居間や駐車スペースや玄関といった場がどのグリッドに適しているかを3段階評価する。評価点の高いグリッドが客観的な意味を持つことになる。そして大きな間違いを犯すことがない。かといってこれのみに頼ることはできない。気を許すと自動翻訳機のようにピントを外すことにもなるからだ。最後はこのアルゴリズムで得たものと建築家の経験と直感を重ね合わせる作業が待っている。