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月曜日, 9月 10, 2007

再訪


日曜日の午前中、「藻岩下の家」を訪ねた。札幌市の藻岩スキー場下の原生林に隣接する住宅で、竣工後10年以上の歳月が経っている。傾斜地の、少し広めの敷地に、住宅、車庫、物置の3つの建物を分散的に「間(ま)」をとって配置している。年月が経ち、その「間(ま)」に貫禄のようなものができて心地よく感じられる。この住宅のイメージをつくっているコンクリートブロックの外壁は、いよいよこれからがお楽しみというような感じで、時間と共になんともいえない風合いが出てきている。
実は、時間と共にペットも代替わりしていて、私は施主の愛犬に熱烈歓迎のおまけ付きであった。
午後からは、3年連続で北海道マラソンの沿道応援。台風一過で札幌は今日だけ真夏、酷暑の中の力走に拍手した。

木曜日, 9月 06, 2007

造作家具


「西宮の沢の家」現場に家具が搬入された。家具といっても、特注のキッチンや、造り付けの収納などの造作家具のことで、工場で製作し現場で組み立てるものだ。設計段階で施主と打合せをして収納される中身の分量を決めているので、持ち物が過不足なく納まり室内が整理できる。施工段階では設計図に基づいてつくられた家具製作図を使って詳細を検討している。
造作家具工事の全体に占める割合は10%程度だが、現場工事での製作が難しいこともあって、近年増える傾向にある。写真は、現場に運び込まれた収納家具の一部。工場で丁寧に塗装仕上げされている。

水曜日, 9月 05, 2007

記録


先日、イチローがMLB新人から7年連続200本安打の新記録を作った。野球ファンのひとりとして祝福したい。イチローのコメント「どんな状況でも記録を残す。自分以外の人間を納得させる。」に感心。継続は力なり、か。
ところで、私がここ数年地道に継続していることがある。小型のスケッチブックをメモ帳としていつも持ち歩いている。私の場合は、物忘れがちな自分のための備忘録でもある。それは、文字だけではなく、絵やイメージ記号のようなものも記す。時として、急場の打ち合わせ用のプレゼンテーションに見事に化けることもあるので、ますます手放せなくなる。画像は、「発寒の住宅」を練っているときに記したスケッチ。全体を小さな家型の集合として考えるコンセプトが意識されている。

木曜日, 8月 30, 2007

大安吉日


昨日、29日は大安吉日で、「発寒の住宅」現場では建て方が始まった。防腐土台と、隅柱が設置された。骨組みはこれから10日間ほどの予定で組み立てる。早速、施主のNさんから「総監督様よろしく!」との激励のメールがリアルタイムに届く。ありがとうございます。そして、応援よろしくお願いします。

現場というフィールドでは、職人さんたち施工チームが一番の「選手」。私たち建築家はベンチで大声を出し選手を鼓舞する「監督」もしくは高校野球で一人だけユニフォームを着ていない「部長」か「総監督」だろうか。とにもかくにも、感動のドラマは始まった。

火曜日, 8月 28, 2007

レイトショー


皆既月食の夜、映画を観た。ゲーリーのドキュメンタリー映画「スケッチオブフランクゲーリー」で、お盆前から札幌シアターキノにてロードショー公開されていた。私にようやく時間ができ、駆けつけた。一人の建築家の生きざまを作品の系譜を追いながら、クライアントやスタッフの証言を交え、建築家本人が語っている。十分に面白く楽しめた。なによりゲーリー建築の自由な造形に癒された。もっとも、帰りがけに目が会ったキノの中島氏は、シドニーポラック監督が何をしたかったのか?と首をかしげていたのだが。

私の施主に、残念ながら若くして他界した彫刻家のM氏がいた。彫刻は建築のようにもっと人々に身近な存在になるべきだ、というのがM氏の持論で、だから建築にとても興味を持っていた。アトリエを新築した時も自宅をリフォームするときも、建築家の私よりよほど熱心だった。そのM氏が不治の病の床につく前、最後のスペイン旅行を敢行したという。目的はゲーリー設計のビルバオグッケンハイム美術館を見るためであった。家族や友人に支えられて、車椅子で廻りとても喜んだという。ゲーリー建築には心を癒す魅力があるのだろう。

札幌での上映は今月末まで、偶然にもM氏の命日と重なる。実は、スクリーンを目で追いながら不覚にも涙しそうになり、場内が暗いうちに席を立つ。映画は一人で観るのに限る。写真は長沼町にあるM氏の「アトリエMOMO」、在りし日の風景である。

金曜日, 8月 24, 2007

たこ渦(うず)連想


先週、小樽の調査に向かった帰り、とある螺旋階段に出会った。さほど広くはない住宅の中心だ。鉄のフレームに寿司屋のカウンターにでもなるかのような極上のスプルス材の段板が取り付けられている。木の香がほのかに漂う段板に誘われ上へ。屋上で海を見る。なんだか嬉しい。

そう、いうまでもなく建築には生命力を喚起する力があるのだ。札幌に戻り、かのミースファンデルローエに螺旋階段のスケッチがあるのを見つける。そこには、金属のフレームに木の段板が描かれていた。
写真は、たこ渦の小皿。隣家からいただいたトウキビがつい先程まで盛られていた。これは美味かった。海と渦。生命の源DNAの二重螺旋構造。フィボナッツイ数列の渦。などなど、連想スパイラルは続く。

木曜日, 8月 23, 2007

スカイライン(skyline)


「西宮の沢の家」では、外観が見えてきた。片流れの勾配屋根が向き合ってできる仮想の大屋根をイメージしている。空を背景にして屋根がつくる輪郭(スカイライン)は、近くにあって景観要素になっている手稲山の雄大なシルエットを意識している。
北海道産の杉竪羽目板が貼られた外壁は、塗装仕上げを待つところ。近日中に、塗装したサンプルを現場に掲げて、施主との共同作業で4種の候補色の中から最終決定をおこなう予定だ。

水曜日, 8月 22, 2007

ファサード(façade)


22日、「大谷地の森の家」で雑誌の写真撮影があり、取材に同行した。竣工引渡し後数ヶ月ぶりで、あらためて隅々まで見る機会となる。大谷地の森に面する居間からの眺めがすばらしい。取材中、せみの鳴き声が響く。この住宅は敷地形状の影響で、間口5メートル弱、奥行き12メートル強の長方形平面。勾配屋根は、北側斜線クリアと室内ボリューム確保を同時に解決することに役だった。施主のたっての希望の左官壁は、外壁の色彩という新しい楽しみを私に与えてくれた。逆に道路側の南面は、ファサード(正面)の見え方をどうするかずいぶん悩んだ。結論はRC基壇の上に木造躯体を載せ、さらに屋根を載せる。はっきりとした三層構成にしたのだが、今はそれでよかったと思っている。

現寸場(full size drawing field)


札幌市の東雁木にある工務店の作業場に向かった。作業場では製材された柱や梁などが墨付けされた後、仕口加工される。作業場の床に貼られた合板には現寸が描かれている。現寸とは、実寸法で図面を起こし確認する作業をいうのだが、異なる3種の軸線が交差する「発寒の住宅」では、木造ではあるが現寸を起こしている。抽象化された「図面」が厚みも重量もある「実物」へ到達する第一歩だ。図面に込められた「思い」を育てていく。現場は、「思い」の集積場でありコミュニケーションの場。いま、関係者みんなのよいコミュニケーションを期待しているところだ。

水曜日, 8月 15, 2007

塔の部屋


「小樽公園通り教会」のシンボルタワーの真下に、塔の部屋がある。7帖ほどの広さで、壁に上げ下げ窓と丸窓がある明るい部屋だ。通りを見下ろす窓に、小さな木製の簡素な椅子がならべられている。聞けば、子供たちの控え室として使用しているという。窓辺から差し込む自然光の下で、絵本を読んだりするのだろう。通りを行きかう人や車の様子もよくわかる。窓の位置や椅子の配置、それらの単純な組み合わせの中に、子供の居場所と読書空間の原点を見る。

定礎


14日、お盆休みの合間を縫って、小樽市の「小樽公園通り教会」へ向う。小樽の建築歴史専門家K氏の調査に協力する目的であった。建物は、花園4丁目にあり、市の歴史的建造物に指定されている2階建ての木造建築。写真は、80年以上前の定礎石。石は、小樽の古い建物に共通する軟石である。定礎は、基礎工事が終了する時に建物の安泰を祈願して行なわれた定礎式の年月日を記録している。

火曜日, 8月 14, 2007

石の風景


お盆に墓石を眺めたので、ニューヨークの摩天楼を思い出した。というのも、かの摩天楼を林立する墓石の風景のようだと評した一文が妙に頭に残っているからだ。出典は定かではないが、問題ではない。写真は、ミース・ファン・デル・ローエのシーグラムビル。敷地の両端にちょうどベンチの高さの濃い緑色の大理石の低い塀がある。目透かし処理ですこし地面から浮き上がっていて、どこまでもディテールにこだわる設計姿勢に感銘を受けた。ミースの作品によく使用されるティノス大理石(TINOS VERDE)と呼ばれるギリシャ産の石。実は、この石が建物の印象を決定付けているように私には思われる。それほど強い印象を与える石の風景である。

木曜日, 8月 09, 2007


今週末からほぼ1週間、建築の現場がつかの間の休息のお盆休みに入る。「西宮の沢の家」では、外壁のガルバリウム角波鋼板が施工中である。写真は、木製サッシとの取り合い部。下から上へ重ね、雨じまいよく施工する板金加工の納まりは、ほぼ確立されている。迷いなく切り取られた鋼板に、職人さんの技を見た。サッシの陰に隠れ、ガラスに撮影者が映りこまないように撮るのは、昔、写真家の安達治氏から教わった私の技である。

B


できるだけ、地元産の素材を使用したいと思っている。北海道産無垢フローリングなどで、長さや色が不揃いで少し節目があるなどの理由で、いわゆるB等級になったものがある。肌触りなどの触感、強度や含水率などの物理性能は通常品同等なのだが、なぜか廉価で市場に出回っている。これらは、間違いなくホンモノで、何の遜色もない。私たちの、ちょっとした価値観の修正でうまく使用すれば、厳しい予算を乗り越える切り札になる。同時に資源の有効利用になるだろう。また、価値とは何かを考えることでもある。
バリーボンズ(B.B)が756本のMLBホームラン記録を達成した。きょう一番のBだ。写真は、日米野球でホームランを打ってベースをまわっているボンズ。数年前、札幌ドームで撮った。画像はまさにBクラスだが。

火曜日, 7月 31, 2007

配筋検査


きょう31日、「発寒の住宅」現場で配筋検査をおこなった。基礎部分は、スカート断熱とし凍結深度の低減をおこない、基礎根入れ深さを浅くしている。配筋はD13㎜とD10㎜の標準仕様である。基礎の高さが低く、作業しやすいのだろう。仕上がりが整然としている。
7月末に節目があった。イチローのMLB1500本安打、参議院選挙、そして作家・小田実(おだまこと)が逝った。私の本棚に彼の出世作「何でも見てやろう」がある。40年前に発行された定価380円の本。帯には、知性と勇気の旅行記とある。私も、好奇心や情熱や感受性をこの本から学んだ読者の一人だ。私たちの住まいづくりは、まさに「何でも見てやろう」の実践でもあると思う。

水曜日, 7月 25, 2007

落雪防止勾配屋根


24日、「西宮の沢の家」の現場では屋根の仕上工事が始まっている。0.35mmのガルバリウム鋼板を落雪防止屋根工法(ステイルーフ)で葺く。経験上、札幌の雪にはうまく適合するという工法で、勾配屋根でありながら雪止めの取付が不要であり、急激な落雪を防止し敷地内での屋根雪処理を可能にしてくれる。建築は、経験の上に成り立つ技術だということを改めて知らされる。

月曜日, 7月 23, 2007

庭づくり


「美しが丘の家」の庭工事が完成した。工事を担当していただいた政村庭園さんから連絡が入り、23日、現場を訪れ工事の確認をした。今回の工事は、植栽を中心にしている。道路側に背の高いニオイヒバをならべ、既存のイチイも一部残している。また、イスやテーブルを置くスペースをコンクリートブロックと同じ素材のインターロッキングブロックで敷きつめた。残りのスペースは、子供達の遊び場として芝を張り込んでいる。
建物が完成してから、今回の庭が完成するまでおよそ10ヶ月を要したが、青々とした木々や芝を眺めていると、そうした時間や苦労が報われるようだ。

火曜日, 7月 17, 2007

敷地確認


先日MLBオールスター戦で、我がイチロー選手のランニングホームラン(英語ではインサイドパークホームランというらしい)の快挙を、地元紙はヒーローのインサイドジョブという表現で報じた。仕事は外でするもの(ホームランはフェンスを越すもの)という常識を、我がヒーローはこともなげに打ち破って見せたのだ。このところ事務所内にこもって山積している業務をこなす日々が続いている私には、涙の出る話だ。


きょうは、札幌市西区発寒で着工を目前にした敷地に向かった。施主が近隣挨拶にまわった後で、敷地の確認と遣方検査をするためである。敷地に来るといろいろと判ることがある。敷地にシンボル的なイメージを与えているポプラの大木がある。施主の話では、数年前の台風で倒れそうになり危険だということで間もなく伐採される運命にあるという。せめて半分だけでも残せないかと、私は思う。カラスの住処となって困ると言う大木も、敷地の環境作りに大きく貢献していると考えるからだ。

金曜日, 7月 06, 2007

交差点


札幌市内から国道36号線沿いに車を走らせ大谷地へ向かう途中、交差点で一時停止の間に札幌ドームの展望台が目にとまった。いうまでもなく建築家・原広司氏の設計。銀色に輝く屋根は、都市の中に舞い降りた巨大なUFO のように近未来的な風景だ。いつ見ても面白い。ぼんやりとした心を刺激する非日常的なイメージを与えている。今年は、ここを拠点とするプロ野球の日本ハムとサッカーJ2のコンサドーレが元気だ。応援する人たちの数も多い。イチローが伝統の中に新しいものを組み合わせると言い、オシムが代表のサッカーはその国の文化を表現するものでなければならないと言う。たかがスポーツと言うなかれ。ここには新しい都市のイメージと人生へのメッセージがあるのだ。

日曜日, 7月 01, 2007

庭づくり


4年前に竣工した「伏見の家」へ、久しぶりに訪れた。建物回りを植物でいっぱいにしたい。手持ちの鉢植えを庭に下ろして、花を見て過したい。当時、施主は切望していた。その言葉通り、敷地の半分以上を占める自慢の庭には色とりどりの植物が咲いている。足かけ4年がかりで、ほぼ満足のいく庭になったという。玄関前に立つと風に乗ってラベンダーの爽やかな香りがした。
時間をかけて、住宅のまわりを整備してゆく。なかなか簡単にできないことなのだが、住宅自体がさらに引き立っている。住宅と生活への愛情が感じられ、設計者として嬉しい。