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土曜日, 12月 16, 2006

仕事


昔読んだ本に、「仕事とは他の誰かに代わって行なう代理行為であり、そのために施主と社会への責任感が育まれ、そのための技術や倫理の研鑽が要求される。」と言う意味のことが書いてあった。いまでも正論だと思う。私が参加しているJIA(日本建築家協会)の北海道支部住宅部会では、毎月のように何がしかの例会を開いて、職能集団としての研鑽に励んでいる。昨日、忘年会を兼ねて今年最後の例会があった。今年の、住宅賞の受賞者のレビューをメインに互いの意見を交換した。気がつくと予定の時間はあっという間に過ぎていた。私も、今年一番感動した映画「マイアーキテクト」について勝手気ままに作り込んだスライドを披露した。そのなかで私は、設計と監理のプロつまりは建築家の仕事の中身は、広く深く困難であると同時にとても楽しいものでもあることを表現したかった。写真は、私が32年前に訪れたバングラデシュの建築現場。この時、カーンの建築に初めて出会った。

木曜日, 12月 14, 2006

鉄筋組み立て


時には一晩で数十センチも積雪があるこの時期、「大谷地の森の家」現場では天候が回復した合間を縫うようにシート養生をしながら作業が進められる。積雪は、ここ数日の暖気で消えた。現在、地下車庫部分の鉄筋組み立て作業が進められている。偶然この日は、現場で施主のH氏と出会う。天気が良いので現場を見に来たという。工事の進捗状況に大変満足の様子で、完成が今から楽しみだと言う。来週の定例打合せ日程を再確認して現場を後にした。

月曜日, 12月 11, 2006

美術館Ⅱ


先々週12月1日、建築学会北海道支部の作品発表会があった。私自身は、年一作限定で発表し始めて今年で16年目になる。いつも、その年の設計の最高のものを見せたいと、また誰にもわかりやすく伝えようと思っている。会場の北海道立近代美術館は、故太田實先生の代表作。私が独立して間もない頃、太田先生に私の自宅と当時建築中のブロック住宅を見ていただいたことがある。「ライトみたいだね」と茶目っ気たっぷりに仰った。思ってもみなかった一言であり、それから私はフランクロイドライトのブロック住宅を書物でよく見るようになった。写真の今回発表した「白い陸屋根の家」は、ライトのブロック住宅のひとつがプランのヒントになっているものだ。

美術館


9日土曜日、午後から「モダン建築の夢」展を見た。三岸好太郎美術館はもう何年来のご無沙汰だった。展示は、山脇巌が設計した三岸好太郎のアトリエを基点として、そこからバウハウスや同時代の日本の建築家たちを俯瞰する、図面と模型と写真資料で構成する見ごたえのあるものであった。特に興味を持ったのは、土浦亀城自邸だった。70年代、「都市住宅」で磯崎新さんとの対談記事を読んだ時から気になっていた。キッチンの黄色の戸棚など、色彩が鮮やかだ。磯崎新さんも影響を受けたのだろうなと勝手な想像をした。その他にも、藤井厚二の聴竹居は、隅々まで神経が行き届いている建築家の集中力の凄さを感じた。そして石本喜久治自邸。石本喜久治没後10年、私が石本事務所に勤め始めた。年かさの先輩から話を聞いてはいたものの写真を見るのは不覚にも今回が初めてだった。

火曜日, 12月 05, 2006

庭球場


地下鉄の幌平橋駅近くで、久しぶりにBASE4のメンバーとビジネスランチを食べた。すぐそばにテニスクラブがある。ここは、その昔、職場の先輩に誘われて初めてテニスをした場所。現在はどうかわからないが、かのウィンブルドンも顔負けの厳格なクラブで、身につけるものは白いもの意外はだめという規律があった。私のテニスの腕前のほうは昔も今も進歩なしだが、懐かしい。雪に覆われたコートに球音が聞こえてくるようだ。テニスコートと緑と雪、絶妙な取り合わせが面白い。

金曜日, 12月 01, 2006

杭(くい)


先日、「大谷地の森の家」で、杭工事が行なわれた。さっと雪が地面を覆っていたが、翌日にはすっかり融けてしまう。これからは空模様をにらみながら工事工程が組まれることになる。初冬、この時期の雪は工事の背中を押すように降るのである。

木曜日, 11月 30, 2006

室蘭


週の初めの2日間、室蘭にいた。ASJイベントニ参加のためであった。写真は、私の展示風景。室蘭は私にとって幼少時代の大半と、青春時代の全てを過した街として忘れることはできない。40年~30年前のこの街は活気にあふれていたように思う。製鉄所の巨大煙突から噴出す煙で、街中が鉄錆色に染まっていた。そのセピア色の風景を誰もが自慢げにしていたように記憶している。今、この街の風景は自然の色を取り戻しているように思う。社会が大車輪で突っ走っているときには誰もブレーキを踏まないものだ。今、たとえシャッター街と揶揄されようと、この街は夢から覚めて自身を見つめる時間を獲ているのだ、とぼんやり考えた。

水曜日, 11月 22, 2006

電飾


週一で通っている北星学園大学の講義が終わって外に出ると、まだ4時過ぎだというのに真っ暗だ。さきほどふりだした雪が風に舞っている。人影のないキャンパスで樹木がクリスマスツリーの電飾をまとって浮かび上がる。思いがけなく出会った美しい光景に、立ち止まった。北国の冬はこれがあるからやめられない。一瞬寒さを忘れる。

月曜日, 11月 20, 2006

地鎮祭


大谷地の家、の地鎮祭があった。幸運にも空は快晴。大谷地の森を背景にして、敷地が一段と映えている。これから来年の春まで続く工事期間中の無事を参加者全員で祈念した。

土曜日, 11月 18, 2006

冬に備えて


17日は天気予報では雪が降るということだったので、昨日あわてて冬用タイヤに取り替えた。私がいつも利用しているディーラーの整備工場では、タイヤ交換のついでに車体の点検整備をセットでしてくれる。ワイパーも冬用に交換した。寒冷地北海道ではこうした準備が不可欠である。タイヤ交換ではいつも待たされるのだが、北海道では特別なことではない。誰もが同じように考えているということだ。17日朝の自宅庭の写真。例の番号ポータビリティを利用して取り替えた携帯電話で写した。

木曜日, 11月 16, 2006

岩見沢(iwamizawa)


この冬の初雪が降った土日の二日間、岩見沢駅前でのASJイベントに参加してきた。岩見沢駅舎のオープンコンペがあったのはもう2年前になる。残念ながら私たちの案は陽の目を見ることがなかったが、当選案による駅舎工事は工事中で、数年後にはグランドオープンだという。聞くところによると、駅舎を中心とした駅前市街地活性化とともに、北海道教育大学の芸術体育分野が岩見沢に再編統合されることによる街づくりを展開すると聞いた。芸術や建築が街づくりの起点になる。写真は、ASJ岩見沢での私の展示風景。

火曜日, 10月 31, 2006

彫刻が街にある(sculpture in the city)


このところ、建築学会北海道支部作品発表会、JIA住宅部会建築家カタログ、JIA優秀建築選2006、そしてBASE4ホームページなどのプレゼンテーションのために時間を割かれている。年賀状の写真もそろそろだろう。それらに、指定サイズのプリント写真やポジのデュープを使う必要があり、大通公園近くの専門写真店に何度か通った。今日はその帰り道、イサムノグチさんのブラックスライドマントラに立ち寄った。夏の暑い盛りであれば無邪気に遊ぶ子供たちの歓声が聞こえるのだが、寒く太陽も顔を隠している今日は誰もいない。それにしても、街に彫刻があると言うのはそれだけで心が暖かくなるものだ。

月曜日, 10月 23, 2006

想像力

「地下鉄に乗って」という映画を観た。浅田次郎の原作で、過去へタイムスリップする物語だ。主人公が地下鉄のホームで出会うかつての恩師の存在感が目に焼きついていた。キャストの中に、田中泯の名前を見つけた。あの舞踏家の泯さんである。30年ほど前、竹山実さんの札幌アトリエインディゴで、舞踏を観た鮮烈な記憶がよみがえった。局所を包帯でぐるぐる巻きにしただけのほとんど全裸で踊るという、それまで見たこともない前衛舞踏であった。その数日後、たしか市民会館でのワークショップで再会した。偶然、トイレで隣り合わせになり言葉を交わした他愛もない記憶。私の頭の中もタイムスリップしてきた。小説や映画や建築、人間の想像力ほど興味深く、感動を呼ぶものはない。

土曜日, 10月 21, 2006

札幌デザイナーズウィーク(sdw)


NPO法人北海道デザインネットワークと北海道新聞社が主催し、JIA(日本建築家協会)北海道支部などが協力、北海道や札幌市や地元放送局などが後援する、デザイン運動週間が始まっている。私たちの事務所は昨年に引き続き2度目の参加。具体的には、JIA住宅部会のパネル展参加と小冊子への広告掲載である。また、受付スタッフとして半日会場に張り付く。こうしたイベントで久しぶりの顔を発見したり、初対面の人との出会いもまた楽しみである。写真は、リノベーション(再生)をテーマとしたJIA展示風景。手前に私たちの事務所の出展パネルがある。

水曜日, 10月 18, 2006

ザ.チェアーⅡ(the chairⅡ)


事務所で15年使っている事務椅子が、とうとう悲鳴を上げた。座面がすり切れたのだ。先月の上京の折、六本木アクシスビルにあるこのメーカーのショールームでファブリックを注文し、札幌に戻ってから椅子を宅急便で茨城県にある工場へ送りだした。その椅子が真新しい座面をつけて、17日に事務所に戻ってきた。体になじんでいるものだから、まだまだ使えるのがうれしい。早速、メーカーの担当者に到着と喜びそして感謝を、メールした。 写真は、ウィルクハーンFSライン、1980年代の傑作事務椅子といわれている。我が事務所の宝もの。

金曜日, 10月 13, 2006

SS式地盤調査


朝一番に、来春着工予定「西宮の沢の家」の地盤調査に立ち会う。いつものスウェーデン式サウンディング試験による地盤調査である。すでに近隣の地盤調査資料により、ある程度の目安は得ているものの、いまだかつて建築物が建った歴史がない場所であるから、念のために調査をしなければならない。写真は、自動回転式の装置である。従来の手回しによる方法に比較して作業は楽そうであるが、この方法の特徴であった「じゃりじゃり音がしましたから礫混じりの砂層です」というような、検査者の手や耳に伝わる振動や音からの経験分析が期待できそうもない。しかし、仕事の効率化や作業の均質化は当然でもあり、これから数値的な正確性を期待すればよいのだろうと思っている。

木曜日, 10月 12, 2006

冬の備え

10月、北海道では今月末に初雪が降る。だから、そろそろ住宅も身支度をはじめる。冬の備えの季節である。かれこれ10数年前に設計した、新琴似の2世帯住宅で建物周りのチェックを依頼された。設計者の目で点検し、冬に向けて具合の悪いところがあれば修繕計画を立てて欲しいと言う趣旨である。実は昨年、駐車スペースを増築したばかりであった。一年ぶりに訪れ、なつかしく歓談した。今回の場合のように、定期的にメンテナンスすることは、住宅を長持ちさせる秘訣かもしれない。

土曜日, 10月 07, 2006

時間分母


40年来の高校時代からの友人H君は、万年幹事として仲間内で知られている。彼の音頭とりで、喜寿になった恩師S先生を囲んでのクラス会があった。最近は、子供の話や孫の話もそこそこに、昔の記憶を遡る話題がもっぱらである。当然の事ながら、記憶は一人ひとり違っていてそのギャップがおもしろい。ただ共通しているのは、加齢とともにまるで加速度がついているように時間が早く過ぎることである。これは友人からの受け売りなのだが、年齢を分母とすると一年の重みは加齢とともに小さくなる。つまりはだんだん一年が早く過ぎてしまうと言うことだ。限りある時間を大切に、そう思ったクラス会であった。もちろん万年幹事のH君と参集したクラスメートに感謝である。写真は、先日上京した折の上野・芸大美術館前の風景。

木曜日, 10月 05, 2006

選ばれてこそ建築家(my architect)


10月3日夜、東京にいた。例の第13回空間デザイン・コンペティション作品部門入賞の授賞式に出席するためである。私がいただいたのは佳作賞ではあるが、ともあれ数百点の応募から選ばれたことは幸運だ。めったにないことなので、先月再会したばかりの旧友と再び祝杯をあげた。もちろん蕎麦屋にきまっている。今回は恵比寿のいまどきの店。4日朝、授賞式会場近く皇居半蔵門あたりを散歩中、目の前を雅子妃の車列が通り過ぎる。一瞬目が会ったように思ったのだが少々酒気帯びである私の錯覚だろう。授賞式後、いつか見たいと思っていた小金井公園内にある前川國男邸を見に行く。質素なつくりだが強い。個室に立てかけてある前川さんのポートレートを拝む。授賞式スピーチで数々の建築家を見てきた元新建築編集長の馬場さんが「選ばれてこそ建築家だ」と言ったのを思い出す。

月曜日, 10月 02, 2006

竣工引渡し(completion)


先月末、「藤野の家」と「美しが丘の家」が同時に竣工した。竣工への手順は、施工者による自主検査と設計事務所の完了検査によるダメ出しと補修等があり、前後して確認検査機関の完了検査が終わってようやく施主へ引き渡される。お施主さまへの引渡し当日は、施工担当者全員が集合した。個別の取り扱い説明などを数時間にわたり入念におこなった。やっと人が住む器になったという実感があるが、器の真価が問われるのは実はこれからだ。手が離れ、引き渡したという安堵感と同時に緊張感がみなぎる一瞬である。 写真は「美しが丘の家」正面外観。