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土曜日, 10月 27, 2007

円形


かつて身近にある形の中で、円形に興味を抱いてあれこれ調べたことがあった。当時、四角形だけを集めた写真集を見たことがきっかけだったかもしれない。目に飛び込んでくるさまざまな事物から、円形を発見する作業が楽しかった。建築に限ってみても、円窓やドームやボールトの円形屋根、平面そのものが円形の建築もたくさん存在することを知った。

私は室蘭市で子供の頃の一時期を過したのだが、そのときに竣工直後の円形校舎を見た記憶があった。先週の土曜日、その円形校舎、室蘭市立絵鞆(えとも)小学校を再訪することができた。およそ半世紀前に円形建築で一世を風靡した建築家・坂本鹿名夫の設計である。

水曜日, 10月 24, 2007

水平線と視野


週一で通っている北星学園大学の空間コミュニケーション論の講義も後期14週の折り返し地点に来た。よく、大学では何を教えているのですか?と問われる。私が通っているのは文学部の心理応用コミュニケーション学科という直接建築と関係のないところだから、疑問をもたれても当然である。しかし、例えば天井の高さ、部屋の広さの「意味」を語ると、そこで立派?に建築の授業が成り立つのが建築の奥深いところ。

20日(土)は、伊達での建築シンポジュウムの帰り、室蘭の地球岬に立ち寄った。ここでは、視野における相対的な上昇で、水平線がせり上がって見える。視覚の不思議だ。

火曜日, 10月 23, 2007

駅と街


21日、いつものASJイベントに参加するため岩見沢に行く。札幌からは、JRの特急で25分の距離である。自宅から駅までの延べ時間を含め比較すると、車を利用した場合と大差ないのだが、今回も一部完成した岩見沢駅舎内部が見たくてJRで行くことにした。写真は、夜景。古レールのサッシを通してレンガの暖かい表情がにじみ出ている。駅を軸に街を再生させようとする意気込みが伝わってくるようだ。

月曜日, 10月 15, 2007

360度


西宮の沢の家では、隣接する既存住宅の解体工事が終わり、今まで見ることのできなかった東側の外観が現れた。住宅街の外観は通常どこかが隠れてしまうものだが、この住宅のようにほぼ360度、距離をもって眺められるのは稀なケースである。そのお陰で、平面と呼応して変化する屋根の表情を、外から見ることができるのはありがたい。

日曜日, 10月 07, 2007

竣工引渡し


「西宮の沢の家」が竣工した。隣接する既存住宅の解体工事が迫っているので、いつもの関係者や新規のお客様による内覧会もなく、5日お施主様へ引き渡した。木造2階建ての2世帯住宅である。写真はこの住宅にとってメインとなる場所。北海道産カラマツ集成材で構成された7.3mスパンのワンルームに、居間食堂台所を納めている。

日曜日, 9月 30, 2007

万能シート


「発寒の住宅」では、外壁に透湿防水シートのタイベックを貼っている。デュポン社の解説によれば、一般名称はポリエチレンフラッシュ紡糸不織布。通常の風や水滴は通さず水蒸気が透過するフィルターのようなもので通気層工法に欠かせない素材だ。万能シートといっても過言ではない。
その万能シートに包まれて、秋の空を背景に屋根の輪郭がくっきりと姿を現してきた。

月曜日, 9月 24, 2007

ランドマーク(landmark)


サッポロビール工場跡地につくられた商業施設サッポロファクトリーでASJイベントがあり参加した。思いがけなく、かつての上司K氏や元所員のS君ご家族などが激励に来てくれた。ありがたい。
この建物も同様に、北海道開拓使の主要建築の多くはレンガ造であった。北海道庁(赤レンガ庁舎)などがすぐに思い出されるように、北海道にはレンガ造建築の横綱級が数多い。レンガは、素材としての強さや美しさを兼ね備えている点で類を見ないが、植物の緑と組み合わせると風景としても素晴らしい。写真は、サッポロファクトリーの南面、ツタとナナカマドとレンガの風景。この場所は、観光バスの玄関口、つまり駐車場。ここに札幌のランドマークのような風景がある。

土曜日, 9月 22, 2007

地鎮祭


22日午前中、千歳市のK邸で地鎮祭が行なわれた。昨晩の雨の影響もなく青空が広がる気持ちのよい朝だ。ときおり風が吹きぬける。まだ紅葉にもなっていないよと、神主さんの言葉。帰りがけに施主Kさんの小さなお嬢さんがコスモスの花を一輪、摘んで私に渡してくれた。
午後から、日本建築家協会設立20周年記念のドキュメンタリー映画鑑賞会に出席。当協会CPD(継続的職業教育)の一環である。「フランクロイドライト/建築と日本」という長編。「大正期に帝国ホテル設計のために来日、今も人々に感動を与え続け、日本の歴史と伝統に出会う機会を我々に与えてくれた。」(紹介文を要約)上映後の質疑応答で、どうしてライトなの?製作者エバンズさんへ素朴に質問したところ、建築家でライト研究者の父親の影響というシンプルな回答をいただく。文化は個人から生まれると、建築家・竹山実さんがかつて語っていたのを思い出す。

金曜日, 9月 21, 2007

待合室


今週末にASJイベントが札幌ファクトリーであるので、散髪へいく。パナシェ・シマダという理髪店で、8年ほど前に札幌市白石区菊水に設計した店舗付住宅だ。3階建ての1階部分が店舗で、そこだけ外断熱のCB造で作った。コンクリートブロック化粧積壁が久しぶりに私を迎えてくれた。小一時間リラックスし、頭もすっきりである。最後の客だったので、すこしおしゃべりをして帰る。店舗だから当然ではあるが、なにより大切にそして工夫をして空間を使っているのが設計者として大変嬉しい。
写真は、待合室のツイン照明の下に飾られた一対のポスター。お客様への気持ちが表れている。

火曜日, 9月 18, 2007

手摺(handrail)


ネコや犬などの四本足の動物には必要ないが、我々人間には、手摺がどうしても必要だ。住宅では階段の昇降はもちろん、玄関の段差やトイレや浴室に設けている。今は元気だから関係ない、と言う場合もある。それでもいつかは手摺のお世話になる時が来る。
手摺が目立ちすぎておかしな雰囲気になってしまうのは困りもの。普段は目立たず、誰でもが必要だと感じたときに使えるようになっていればよい。一見、手摺と見えないようにつくるのも手だ。大切なのは、よく考えて手摺をデザインすることだろう。
写真は、「八軒の家」の階段まわり。暖房放熱パネルを手摺代わりに使用した例。階段まわりの冷気を完全に遮断し、居間を居心地のよいものにしている。

17日は、敬老の日、日本の高齢化率(全人口に対する65歳以上の人口比)が20%を超えた、という記事が印象に残った。

火曜日, 9月 11, 2007

工事現場


建設工事中の敷地はいつも活気にあふれている。昨日10日は、写真の「発寒の住宅」の上棟だった。この住宅は、延べ床面積は30坪台の小住宅なのだがとても広々と感じられる。それもそのはずで、敷地いっぱいにつくるというほとんど平屋の計画だからだ。基礎の上にしっかりと柱梁の軸組みが載り、水平方向と垂直方向の大きなフレームができあがった。
空間の形が見えてくる骨組み段階の現場が、設計者としての私は好きだ。そもそも現場の雰囲気が好きなのかもしれない。まちなかの工事現場には興味があるし、新しくできた建物はちょっと覗いてみたい。

今日11日といえば、数年前に見たNYのグランドゼロ。工事現場の巨大さに圧倒された。

月曜日, 9月 10, 2007

再訪


日曜日の午前中、「藻岩下の家」を訪ねた。札幌市の藻岩スキー場下の原生林に隣接する住宅で、竣工後10年以上の歳月が経っている。傾斜地の、少し広めの敷地に、住宅、車庫、物置の3つの建物を分散的に「間(ま)」をとって配置している。年月が経ち、その「間(ま)」に貫禄のようなものができて心地よく感じられる。この住宅のイメージをつくっているコンクリートブロックの外壁は、いよいよこれからがお楽しみというような感じで、時間と共になんともいえない風合いが出てきている。
実は、時間と共にペットも代替わりしていて、私は施主の愛犬に熱烈歓迎のおまけ付きであった。
午後からは、3年連続で北海道マラソンの沿道応援。台風一過で札幌は今日だけ真夏、酷暑の中の力走に拍手した。

木曜日, 9月 06, 2007

造作家具


「西宮の沢の家」現場に家具が搬入された。家具といっても、特注のキッチンや、造り付けの収納などの造作家具のことで、工場で製作し現場で組み立てるものだ。設計段階で施主と打合せをして収納される中身の分量を決めているので、持ち物が過不足なく納まり室内が整理できる。施工段階では設計図に基づいてつくられた家具製作図を使って詳細を検討している。
造作家具工事の全体に占める割合は10%程度だが、現場工事での製作が難しいこともあって、近年増える傾向にある。写真は、現場に運び込まれた収納家具の一部。工場で丁寧に塗装仕上げされている。

水曜日, 9月 05, 2007

記録


先日、イチローがMLB新人から7年連続200本安打の新記録を作った。野球ファンのひとりとして祝福したい。イチローのコメント「どんな状況でも記録を残す。自分以外の人間を納得させる。」に感心。継続は力なり、か。
ところで、私がここ数年地道に継続していることがある。小型のスケッチブックをメモ帳としていつも持ち歩いている。私の場合は、物忘れがちな自分のための備忘録でもある。それは、文字だけではなく、絵やイメージ記号のようなものも記す。時として、急場の打ち合わせ用のプレゼンテーションに見事に化けることもあるので、ますます手放せなくなる。画像は、「発寒の住宅」を練っているときに記したスケッチ。全体を小さな家型の集合として考えるコンセプトが意識されている。

木曜日, 8月 30, 2007

大安吉日


昨日、29日は大安吉日で、「発寒の住宅」現場では建て方が始まった。防腐土台と、隅柱が設置された。骨組みはこれから10日間ほどの予定で組み立てる。早速、施主のNさんから「総監督様よろしく!」との激励のメールがリアルタイムに届く。ありがとうございます。そして、応援よろしくお願いします。

現場というフィールドでは、職人さんたち施工チームが一番の「選手」。私たち建築家はベンチで大声を出し選手を鼓舞する「監督」もしくは高校野球で一人だけユニフォームを着ていない「部長」か「総監督」だろうか。とにもかくにも、感動のドラマは始まった。

火曜日, 8月 28, 2007

レイトショー


皆既月食の夜、映画を観た。ゲーリーのドキュメンタリー映画「スケッチオブフランクゲーリー」で、お盆前から札幌シアターキノにてロードショー公開されていた。私にようやく時間ができ、駆けつけた。一人の建築家の生きざまを作品の系譜を追いながら、クライアントやスタッフの証言を交え、建築家本人が語っている。十分に面白く楽しめた。なによりゲーリー建築の自由な造形に癒された。もっとも、帰りがけに目が会ったキノの中島氏は、シドニーポラック監督が何をしたかったのか?と首をかしげていたのだが。

私の施主に、残念ながら若くして他界した彫刻家のM氏がいた。彫刻は建築のようにもっと人々に身近な存在になるべきだ、というのがM氏の持論で、だから建築にとても興味を持っていた。アトリエを新築した時も自宅をリフォームするときも、建築家の私よりよほど熱心だった。そのM氏が不治の病の床につく前、最後のスペイン旅行を敢行したという。目的はゲーリー設計のビルバオグッケンハイム美術館を見るためであった。家族や友人に支えられて、車椅子で廻りとても喜んだという。ゲーリー建築には心を癒す魅力があるのだろう。

札幌での上映は今月末まで、偶然にもM氏の命日と重なる。実は、スクリーンを目で追いながら不覚にも涙しそうになり、場内が暗いうちに席を立つ。映画は一人で観るのに限る。写真は長沼町にあるM氏の「アトリエMOMO」、在りし日の風景である。

金曜日, 8月 24, 2007

たこ渦(うず)連想


先週、小樽の調査に向かった帰り、とある螺旋階段に出会った。さほど広くはない住宅の中心だ。鉄のフレームに寿司屋のカウンターにでもなるかのような極上のスプルス材の段板が取り付けられている。木の香がほのかに漂う段板に誘われ上へ。屋上で海を見る。なんだか嬉しい。

そう、いうまでもなく建築には生命力を喚起する力があるのだ。札幌に戻り、かのミースファンデルローエに螺旋階段のスケッチがあるのを見つける。そこには、金属のフレームに木の段板が描かれていた。
写真は、たこ渦の小皿。隣家からいただいたトウキビがつい先程まで盛られていた。これは美味かった。海と渦。生命の源DNAの二重螺旋構造。フィボナッツイ数列の渦。などなど、連想スパイラルは続く。

木曜日, 8月 23, 2007

スカイライン(skyline)


「西宮の沢の家」では、外観が見えてきた。片流れの勾配屋根が向き合ってできる仮想の大屋根をイメージしている。空を背景にして屋根がつくる輪郭(スカイライン)は、近くにあって景観要素になっている手稲山の雄大なシルエットを意識している。
北海道産の杉竪羽目板が貼られた外壁は、塗装仕上げを待つところ。近日中に、塗装したサンプルを現場に掲げて、施主との共同作業で4種の候補色の中から最終決定をおこなう予定だ。

水曜日, 8月 22, 2007

ファサード(façade)


22日、「大谷地の森の家」で雑誌の写真撮影があり、取材に同行した。竣工引渡し後数ヶ月ぶりで、あらためて隅々まで見る機会となる。大谷地の森に面する居間からの眺めがすばらしい。取材中、せみの鳴き声が響く。この住宅は敷地形状の影響で、間口5メートル弱、奥行き12メートル強の長方形平面。勾配屋根は、北側斜線クリアと室内ボリューム確保を同時に解決することに役だった。施主のたっての希望の左官壁は、外壁の色彩という新しい楽しみを私に与えてくれた。逆に道路側の南面は、ファサード(正面)の見え方をどうするかずいぶん悩んだ。結論はRC基壇の上に木造躯体を載せ、さらに屋根を載せる。はっきりとした三層構成にしたのだが、今はそれでよかったと思っている。

現寸場(full size drawing field)


札幌市の東雁木にある工務店の作業場に向かった。作業場では製材された柱や梁などが墨付けされた後、仕口加工される。作業場の床に貼られた合板には現寸が描かれている。現寸とは、実寸法で図面を起こし確認する作業をいうのだが、異なる3種の軸線が交差する「発寒の住宅」では、木造ではあるが現寸を起こしている。抽象化された「図面」が厚みも重量もある「実物」へ到達する第一歩だ。図面に込められた「思い」を育てていく。現場は、「思い」の集積場でありコミュニケーションの場。いま、関係者みんなのよいコミュニケーションを期待しているところだ。