今回、依頼者から相談された子供室改修工事の目的は、幼児期を過ぎ成長期を迎えた子供たちに、それぞれ独立したスペースをつくりプライバシーを守ること。新築時、まだ幼い子供たちそれぞれの個室ではなく2室相当分のワンルームを用意し、時期が来たら仕切る設計としていた。いま、その時が来た。設計者として、子供の成長を楽しみにしている両親に応えたい。とはいえ、いままで直接ふれあうことができた家族が、個室化で疎外感を感じることのないように、独立しつつ連続する「空気感」を建築で表現できる計画となればと願った。
透光不可視の素材ガラスブロックは、まさにそうした「空気感」にふさわしい素材と考えた。改修の平面構成は、庭に面した南側に約800mm幅の廊下を残し、廊下から2分割した子供室へ出入りする、逆T字型に壁を配した。廊下の奥は両親の主寝室で、廊下を通るたび、それぞれの子供室の様子がわかり、成長を温かく見守りたい両親の心情に応えられるだろう。また子供室内からも廊下を通る家族や窓越しの庭が、それとなく分かり独立しつつも孤立感がない、そうした連続性が重要だと考えた。それぞれの連続性と個室の独立性、ふたつの相反する機能を建築の仕切り壁に求めた。採用したのは、表面がフロスト加工された半透明なガラスブロック・フロストプレーン。ガラスブロックは、特筆すべき遮音性能がある。日本建築学会資料によると周波数500Hzの音響透過損失35dB、これはT-3等級の遮音性能。「空気感」に必要な静けさづくりに役立っている。(山之内裕一/山之内建築研究所)