土曜日, 4月 23, 2016

親方の把手(handle of boss)

把手に鉄を使おうや、と言ったのは大工の親方であった。面白い、と私は思った。ただ言われた通り造ればよいのが大工の役割ではない。私はどのような場面であっても作り手としての矜持がなければならないと思っていた。そして、手に持っていた図面の裏に、親方の言う把手のスケッチを描いて見せた。そんな感じだ!親方の顔が笑顔ではじけた。私のデザインイメージと親方のそれが一致した。それから数週間後、把手の詳細が描かれた玄関引戸承認図が送られてきた。製作は隣町の鉄工場で作るという。もちろん鉄そのままの黒皮仕上げに異論はなかった。まだ小学生の頃、親方はこのニシン番屋でやん集と呼ばれた漁夫たちに遊んでもらった記憶があるという。今から60年以上前のことだ。復原された玄関引戸は、格子状の猿棒面枠に半紙版のガラス板をはめこんだものだ。把手は、親方の太い指がしっかり引掛かるサイズに機能的に作られた。親方の把手、である。(積丹町美国ヤマシメ福井番屋~2016年3月末日修復工事竣工)

木曜日, 4月 21, 2016

コンクリートブロックでつくるもの

コンクリートブロック造住宅の設計や建設現場に関わっていると、構造体だけではなく家具などより人体に触れる部分をブロックでつくることが出来たらいいなと考えることがある。例えば、木造住宅で、くまなく木材で仕上げるのと同じこと。さらに、丸太を輪切りにした手作りスツールなどが並べてあるのを発見した時など、住人の愛着を感じ思わず微笑んでしまう。そこはコンクリートブロック造住宅も同じである。均質無垢な素材感は、地中海の白い漆喰で固められた島々の街のように魅力的な風景を想起させるばかりでなく、住人参加や持続可能な維持管理など、いわば住宅の本質さえ問うのである。
今回、二つの例からコンクリートブロック素材の持つ家具的要素の可能性を探ってみたい。
第一例は、地中海に近いスペインの小さな集落・モンフェリ―に建てられた教会堂の屋外ベンチである。時として私たちは、ちょうどよい高さの植込みや噴水の端、そして階段へベンチのように座り込む。モンフェリー教会堂の屋外ベンチは、前庭を取り囲む手摺のように設置され、台地状になった敷地にそそり立つ教会堂に礼拝者を迎えている。地中海に近いとはいえ、冬は寒い。村人たちは太陽で暖められたコンクリートブロック製ベンチに座って体を暖めるのだろう。ブロックの背もたれは人体に合う角度に考えられている。ブロックの教会堂にはブロックのベンチがよく似合うのである。
次に、薪ストーブの遮熱壁にコンクリートブロックを用いた例である。近くに木製障子の引戸があるため、耐熱効果が期待できる壁を求められた。薪の火が消えても遮熱壁の蓄熱効果が働きほんのり暖かい。
その他、テーブル、照明器具、本棚、等々ブロックの家具的利用範囲は住宅のあらゆる場面に広がる。いわば、コンクリートブロックは日常的で身近な素材なのであるが、その話は別の機会に譲りたい。
スペインカタロニアのモンフェリー教会堂のベンチ
薪ストーブの遮熱壁(北海道札幌市)