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土曜日, 4月 23, 2016

親方の把手(handle of boss)

把手に鉄を使おうや、と言ったのは大工の親方であった。面白い、と私は思った。ただ言われた通り造ればよいのが大工の役割ではない。私はどのような場面であっても作り手としての矜持がなければならないと思っていた。そして、手に持っていた図面の裏に、親方の言う把手のスケッチを描いて見せた。そんな感じだ!親方の顔が笑顔ではじけた。私のデザインイメージと親方のそれが一致した。それから数週間後、把手の詳細が描かれた玄関引戸承認図が送られてきた。製作は隣町の鉄工場で作るという。もちろん鉄そのままの黒皮仕上げに異論はなかった。まだ小学生の頃、親方はこのニシン番屋でやん集と呼ばれた漁夫たちに遊んでもらった記憶があるという。今から60年以上前のことだ。復原された玄関引戸は、格子状の猿棒面枠に半紙版のガラス板をはめこんだものだ。把手は、親方の太い指がしっかり引掛かるサイズに機能的に作られた。親方の把手、である。(積丹町美国ヤマシメ福井番屋~2016年3月末日修復工事竣工)

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