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木曜日, 11月 10, 2016

玄関のこと

週間ブロック通信11月7日号に、ブロック住宅の玄関についての話を載せています。住宅の外と内を繋ぐ空間として最初に考えておきたいと思いました。

木曜日, 9月 15, 2016

ブロックらしさのカタチ

夏季2か月中断していた業界紙・週間ブロック通信コラム「ブロック住宅の系譜」の最新号です。、設計作業における形の持つ意味を考察した前回を受けて、特徴的なブロック建築のディテールについて報告している。素材独自の構法から導き出された必然的なカタチを例に挙げて、コンクリートブロックの素材感や比例がつくる美意識を伝えたいと考えた。

月曜日, 8月 01, 2016

地盤と基礎断熱

北海道浦河町の個人住宅現場にて、耐震性と断熱性を満たすために、軟弱地盤+基礎断熱+暖房蓄熱=コロンブス工法、を試すことになった。既存建物の建て替えであり、旧建物は木杭を使用している。コロンブス工法は、地盤置換工法の別名。PLG社の特許工法名称。住宅の総重量を試算し、それに相当する地盤を軽量な素材に置き換え構造的バランスを取る工法。先の熊本、5年前の東北の震災でも有効性が実証されたという。

原理はPLG社のウェブサイトからの引用で「基礎下の重い土を取り除き、そこに軽いEPSのジオフォームを入れ、軟弱地盤にかかる建物の重量を軽くして沈下を抑えます。さらに、地盤とのバランスをとり、建物が傾いて沈む不同沈下を防ぎます」「基礎下全面に敷設されるジオフォームの断熱性によって、床下の熱損失が減り、基礎コンクリートに蓄熱する躯体蓄熱暖房などによってCO2削減に効果があります」となる。建物基礎と地面との間で縁を切る免震工法でもある。
EPS t=200mmを敷き込み、隙間に船底のキール状梁型をつくる

水曜日, 6月 22, 2016

週間ブロック通信6月20日号

業界紙・週間ブロック通信で毎月連載しているコラム「ブロック住宅の系譜」の最新号です。今回は、設計作業における形の持つ意味を考察している。手始めに特徴的な円形について取り上げた。
文章は、自然と対峙するために人工的な幾何学として円形を用いた、しかもブロックでというところで終わった。なぜ円形なのか?という批評的な論考まではたどり着いていない。宿題です。

木曜日, 5月 26, 2016

混構造は建築のパッチワーク

コンクリートブロックで建築を設計して30年になる。北海道の大地に大量に埋蔵されている火山灰を原料としてセメントで固めたのがコンクリートブロック。実に北海道らしさの漂う建築材料である。いわゆる地場産品であるから、かつては全道各地に生産拠点があった。人力で1枚1枚積み上げる職人の弁当分のカロリー消費で済み、現場で廃材を生むこともなく、仮に使い残しや端切れが出ても砕いて新規のブロックに再生することができる。自然石のように蓄熱が期待できるので外断熱の躯体には適している。ブロック目地の内側に縦横に鉄筋補強を入れると大きな耐震性を得ることができる。木造と組み合わせる混構造は、それぞれの素材をお互いに引き立てあう。デザインもパッチワークのような面白さがある。
この住宅は、そうした混構造のひとつである。2004年に竣工し、12年後の2016年新しく撮影した。
パッチワークのような正面外観~1階コンクリートブロック造+2,3階木造
1階コンクリートブロック造内観~壁はコンクリートブロック素地
2階木造内観~壁はカラマツ構造合板素地

土曜日, 4月 23, 2016

親方の把手(handle of boss)

把手に鉄を使おうや、と言ったのは大工の親方であった。面白い、と私は思った。ただ言われた通り造ればよいのが大工の役割ではない。私はどのような場面であっても作り手としての矜持がなければならないと思っていた。そして、手に持っていた図面の裏に、親方の言う把手のスケッチを描いて見せた。そんな感じだ!親方の顔が笑顔ではじけた。私のデザインイメージと親方のそれが一致した。それから数週間後、把手の詳細が描かれた玄関引戸承認図が送られてきた。製作は隣町の鉄工場で作るという。もちろん鉄そのままの黒皮仕上げに異論はなかった。まだ小学生の頃、親方はこのニシン番屋でやん集と呼ばれた漁夫たちに遊んでもらった記憶があるという。今から60年以上前のことだ。復原された玄関引戸は、格子状の猿棒面枠に半紙版のガラス板をはめこんだものだ。把手は、親方の太い指がしっかり引掛かるサイズに機能的に作られた。親方の把手、である。(積丹町美国ヤマシメ福井番屋~2016年3月末日修復工事竣工)

木曜日, 4月 21, 2016

コンクリートブロックでつくるもの

コンクリートブロック造住宅の設計や建設現場に関わっていると、構造体だけではなく家具などより人体に触れる部分をブロックでつくることが出来たらいいなと考えることがある。例えば、木造住宅で、くまなく木材で仕上げるのと同じこと。さらに、丸太を輪切りにした手作りスツールなどが並べてあるのを発見した時など、住人の愛着を感じ思わず微笑んでしまう。そこはコンクリートブロック造住宅も同じである。均質無垢な素材感は、地中海の白い漆喰で固められた島々の街のように魅力的な風景を想起させるばかりでなく、住人参加や持続可能な維持管理など、いわば住宅の本質さえ問うのである。
今回、二つの例からコンクリートブロック素材の持つ家具的要素の可能性を探ってみたい。
第一例は、地中海に近いスペインの小さな集落・モンフェリ―に建てられた教会堂の屋外ベンチである。時として私たちは、ちょうどよい高さの植込みや噴水の端、そして階段へベンチのように座り込む。モンフェリー教会堂の屋外ベンチは、前庭を取り囲む手摺のように設置され、台地状になった敷地にそそり立つ教会堂に礼拝者を迎えている。地中海に近いとはいえ、冬は寒い。村人たちは太陽で暖められたコンクリートブロック製ベンチに座って体を暖めるのだろう。ブロックの背もたれは人体に合う角度に考えられている。ブロックの教会堂にはブロックのベンチがよく似合うのである。
次に、薪ストーブの遮熱壁にコンクリートブロックを用いた例である。近くに木製障子の引戸があるため、耐熱効果が期待できる壁を求められた。薪の火が消えても遮熱壁の蓄熱効果が働きほんのり暖かい。
その他、テーブル、照明器具、本棚、等々ブロックの家具的利用範囲は住宅のあらゆる場面に広がる。いわば、コンクリートブロックは日常的で身近な素材なのであるが、その話は別の機会に譲りたい。
スペインカタロニアのモンフェリー教会堂のベンチ
薪ストーブの遮熱壁(北海道札幌市)

金曜日, 3月 18, 2016

室工大建築設立50周年その2

室工大建築学科は、1966年に1期生を迎えた。私が1970年に入学するのと入れ替わりに初めての卒業生を世に送り出したのだ。1970年といえば、世の中はまだ騒然とした雰囲気が残っており、室工大にも1年遅れで学園紛争の最後の波が打ち寄せていた。
しかし新入生の私たちは、授業やキャンパス内でこれといった不都合を感じることはなかった。
あったのかも知れないが遠巻きに眺めていた。私は、大学で建築を学びたいという気持ちが優先していた普通の1年生だったから。そうした私の気持ちを、「都市住宅」等の建築雑誌は時代の雰囲気と共に受け止めてくれていたように思う。いわく、「個と全体」「集住体」「個室群」「保存」「サーベイ」などなど。建築雑誌ではなく「美術手帳」で連載された「建築の解体」には痛快さを感じた。
「アンアン」「ノンノ」や「平凡パンチ」「朝日ジャーナル」といった雑誌にも時代の雰囲気が色濃く漂っていた。ともあれ、1970年4月、私の学生生活は波乱なくスタートしたのである。
ナイトミュージアム、国立西洋美術館。2016年3月。

木曜日, 3月 17, 2016

室工大建築創立50周年その1

本年4月で、私の出身校である室蘭工業大学の建築工学科が創立50周年となります。その記念行事が、3月19日に大学で行われます。卒業生が数人パネラーとなり、私もその一人として学生時代の思い出話をさせていただくことになりました。私は、ちょうど今頃、4年の卒業の直前に東京を中心におこなった卒業旅行のことを話したいと思っています。
卒業旅行では、1974年3月、1年先輩が当時所属していた早稲田大学吉阪研究室を訪問しました。たまたま先週、建築資料館で開催されていた「吉阪隆正展」を観た時、40数年前のことを想いだしたというわけです。

水曜日, 3月 16, 2016

ENZO MARI の主題によるベンチ

バス停のある札幌市内のコンビニ店前に、ENZO MARIの主題によるベンチを製作して半年がたった。木がいい色に焼けてきている。鉄釘は錆を出してしっかりと木に刺さっている。店主に聴くと、よく利用されているという。私の興味は、デザインがどう人の行動に作用するのかということ。見るからに素人が作った木材素地のベンチが、街中にポンと置かれている。バスを待つ間、どうぞ使ってくださいというのである。一台のベンチがこの場所を公共空間にしている、その痛々しさが新鮮ですらある。

金曜日, 1月 15, 2016

続・僕の小部屋

雑誌「リプラン東北」に、「僕の小部屋」が掲載されています。築後13年物のリノベーションです。以下、昨年末のブログから。
「僕の小部屋」がリプラン誌に掲載されています。そもそもこの住宅は、13年前の新築時リプラン誌で掲載されたことがありました。2度目の登場という幸運な住宅。実は、子供室の新設が求められていました。新築時は、幼い兄弟が一つの部屋を二人でシェアすることで子供たちの独立心を養うことができました。いま成人を迎える年になって、兄弟それぞれの独立した部屋が必要になったのです。居間の上に設けられたオープンスペースが敷地です。敷地と会えて表現しました。小さな小部屋が設計条件ですが、これは一つの建築をつくるのと同じくらいしっかりと考えて設計しなければなりません。なにせ敷地は、居間の真上にあっておまけに吹抜けに面しているのです。吹抜けからの生活音や壁による採光遮断を防ぐことが求められました。そこで提案したのが、ガラスブロックを用い空間を仕切ることで遮音と採光の両立を可能にした子供室です。これは想定以上にうまくいきました。ガラスブロックは、およそ100kg/㎡の重量がありますが、コンクリートブロック壁と鉄筋コンクリートの構造体が難なく支えています。

月曜日, 1月 04, 2016

2016年の始めに

新年あけましておめでとうございます。


玄関に取り付けた、「しめ飾り」は庭の隅にあるプンゲンス・トウヒ。一年間に伸びた枝先を切り取って使う。事務所の室内には、頂戴した日めくりカレンダーを取り付けている。台紙に商店名や電話番号とFAX番号及び住所などの広告入りで私の事務所にはちょっと違和感がある。先方には申し訳ないと思いつつ「日めくり」本体と台紙を「解体」し、シンプルなクラフト紙の台紙に付け替えた。もともとの台紙の隅をよく見ると、グッドデザイン・ロングライフ賞受賞とある。調べてみると、確かに2012年度の受賞だ。今年は366枚、一枚一枚の薄い紙にぎっしりと一日の情報が書き込まれている。読んでなるほどという一言もある。受賞理由のひとつに、暦文化というものの継承がある。WEBサイトをよく読むと、どうやら受賞対象は本体のみ、台紙は入っていないようだ。審査員・川上元美、山本秀夫とあるから、まあそうだろうと一人合点。少し大げさに言えば、本体のように継承されるものと台紙のように改変されるものとの出会いが文化をつくることじゃないか。そのために、本体と台紙を「解体する」という行為が時に必要なのではないかと思うわけです。
日めくりカレンダー
しめ飾り

木曜日, 12月 31, 2015

僕の小部屋




「僕の小部屋」がリプラン誌に掲載されています。そもそもこの住宅は、13年前の新築時リプラン誌で掲載されたことがありました。2度目の登場という幸運な住宅。実は、子供室の新設が求められていました。新築時は、幼い兄弟が一つの部屋を二人でシェアすることで子供たちの独立心を養うことができました。いま成人を迎える年になって、兄弟それぞれの独立した部屋が必要になったのです。居間の上に設けられたオープンスペースが敷地です。敷地と会えて表現しました。小さな小部屋が設計条件ですが、これは一つの建築をつくるのと同じくらいしっかりと考えて設計しなければなりません。なにせ敷地は、居間の真上にあっておまけに吹抜けに面しているのです。吹抜けからの生活音や壁による採光遮断を防ぐことが求められました。そこで提案したのが、ガラスブロックを用い空間を仕切ることで遮音と採光の両立を可能にした子供室です。これは想定以上にうまくいきました。ガラスブロックは、およそ100kg/㎡の重量がありますが、コンクリートブロック壁と鉄筋コンクリートの構造体が難なく支えています。木造建築では重量のあるガラスブロックの壁を支えるのはとても難しい選択でした。コンクリートブロック造であったことが、この選択を可能にしたのです。
今年のブログは、この回を入れて26回。月2回程度の少なさでした。来年は、もっと情報発信していきます。

木曜日, 12月 10, 2015

太平洋と日本海

積丹町の海・日本海
浦河町の海・太平洋
太平洋岸の浦河町と日本海岸の積丹町、中間に位置する札幌から車で3時間と2時間の距離にある。建築はそれぞれに異なる土地に建つものだから、新しい仕事は初めての場所との出会いだ。はじめて見る風景や建物に出会うことは楽しいもので、そこが気持ちのいい空気の澄んだ自然の中であればなおさらだ。北海道の沿岸部は、いうまでもなく漁業で栄えた町が多い。現在の港は、どこも立派なコンクリート製の埠頭に漁船が係留している。カモメがのどかに佇むそばで仕事の手を休めることなく作業をする漁師たちの仕事場は、市街地の工事現場で屋外作業をしている職人たちとも異なるある種の気高さがあるように思う。たぶん、背景にある広大な海のせいだ。 

火曜日, 10月 13, 2015

建築家はチャレンジし続ける

10・6の午後、半蔵門近くの会場で第22回空間デザインコンペティションの表彰式があった。「僕の小部屋」が作品部門で入賞した。実は、9年前にも同じ受賞をしている、2度目だ。コンペのアドバイザーは、かつての新建築編集長だった馬場璋造氏。表彰式の後の懇親会で、「選ばれてこそ建築家です」という前回祝辞が記憶に残っている。今回は、「建築家はチャレンジし続けなければなりません」という言葉をいただいた。「どんな仕事も、チャレンジなしでは手にすることすらできません」と、まさに私へ向けて発せられたような言葉だ。二次会は、近くの蕎麦屋で友人と数年ぶりの再会を果たすというおまけ付きであった。新しい力がこみ上げてくるような…気がした。
入賞した応募作品の前にて
二次会は東京の友人たちと乾杯
馬場璋造氏の祝辞

木曜日, 9月 24, 2015

都市住宅のこと

来月、雑誌・都市住宅の編集長として名高い植田実さん(まだお会いしたことはないが、尊敬と親しみを込めて)の講演会が札幌で開催される。テーマは1970年代の建築についてだという。
私は1970年に大学に入り、1974年に卒業した。私は、まさに雑誌・都市住宅こそ広い建築の世界を見せてくれたメディアであったと思う。このことは、同時期に建築を学んだ多くの建築家が一様に同じ感想を持っていることからもうかがい知ることができる。建築家・渡辺真理さんの文章(INAXREPORT・NO.170 再読「都市住宅」)を読んだ時に確信した。私も彼と同学年だからだ。

コールハースのPROJECTJAPAN(2012)やメタボリズムの未来都市展(森美術館2011~12)、2014年ベネチアビエンナーレ日本館展示、そして2015年の誰も知らない建築の話など、戦後とりわけ1970年代の建築がこのところ引き合いに出される印象がある。何がそこで起きていたのかを問う。
今でこそ、フランクゲーリ―のように建築がメディアそのものとして解釈されることは珍しくない。1970年代、雑誌・都市住宅はそのものが特別な建築メディアだった。だれにも分かりやすいテーマに絞りながら鋭く、中身が深く解像度がとにかく高い。

前出のINAXREPORT・NO.170で、植田実さんはまた「建築家は鮮烈でなければ」と言い放って、あの頃はよかった…と想い出話で終わらせてしまいそうな私たちを牽制している。今回の講演会が、鮮烈な建築家を生み出すひとつの契機になればと思う。
1970年代後半、消費文化を牽引したPARCO…私にとって、ああ原点と呼べるのは「都市住宅」




火曜日, 9月 15, 2015

店舗付き住宅

職住近接の店舗付き住宅で、店舗の部分にコンクリートブロックを用いた設計例。コンクリートブロックの凛とした雰囲気とラフな素材感が初めてのお客様に新鮮さを提供する。
ファサード見上げ
内部

日曜日, 9月 13, 2015

入賞しました

第22回空間デザインコンペティションの作品部門に入賞しました。このコンテストは、ガラスやガラスブロックを用いた設計を対象にするもので、提案部門と作品部門に分けられています。ガラスブロックは、箱状のもので内部に空気が詰まっています。四方がガラスでつながっているため、熱は表面を裏側まで伝わります。したがって、高度な断熱性能は得られません。北国の断熱性能を重視する設計シーンからは、近年完全に見放された素材になっています。しかしながら、ガラスの重量感や透光性は他の素材では得がたいものがあります。今回は、もう一つの特徴である遮音性能のよさを最大限に生かし、内部に小部屋をつくるという限定的な用い方をしました。適材適所ですね。
提出したプレゼンシートの一部

木曜日, 9月 03, 2015

コンクリート打設

基礎工事のコンクリート打打設。職人さんたちの非常に手慣れた様子で黙々と作業が進む。陽ざしも強くなく、雨も降りそうもない。コンクリート打設日和だ。
今回は、布基礎の立ち上がり部分。基礎断熱材XPS100mmを外側にはさんで打設した。北国仕様である。


月曜日, 8月 31, 2015

色と形

アーティストの畑江さんは、実は私のクライアントでもある。かれこれ20年前に、札幌市内に住宅を設計させていただいた。その畑江さんが先日、北広島市と札幌市内のギャラリーで個展を続けざまに開いた。そのうちの1点を今回、私の事務所で譲り受けた。微妙な空気の動きにつられて動き出す繊細な彫刻である。壁コンクリート打放しの無頓着でざっくりとした風合いと、繊細な形で鮮烈な色彩の彫刻がとても良いく対比している。建築空間は、こうしたアートの背景になりたい。アートで生かされる建築空間をつくりたい。
昼の自然光に浮かぶ
夜の人工照明でぼんやりと…