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土曜日, 6月 09, 2007

街角


8日午前中、嬉しい出会いがあった。構造家のSさんから突然の電話。電話での用件が済んでから、直にお会いすることになりS宅を初めて訪問した。住所を教えていただき、車で向かう。角を曲がると、個性的なコンクリート打放し壁面が正面に見えた。S宅は建築家故・中井仁実(なかいよしみ)さんの設計で、1988年札幌市東区に竣工している。コンクリートの表現にこだわり続けた中井さんの、40代前半の仕事。しっかりと大地に根を張った、時間と共に存在感を増す種類の建築である。「中井さんが残してくれました。」Sさんの言葉が心地よかった。

火曜日, 6月 05, 2007

準備


北海道産の乾燥松材を熟練の大工さん達が手加工している、札幌市郊外の作業場を訪れた。無垢材を露出部に使用し、集成材は大壁で隠れる部分に使用する。というような材の使い分けの確認や納まりを、工務店の担当者と大工の棟梁と私とで打合せした。図面の考え方を伝え、解決法をその場で共に考える。来週には、現場で建て方作業が始まる。帰り際、また来てくれと大工の棟梁が言う。手作りの職人さん達との会話は楽しい。

金曜日, 6月 01, 2007

継続


今日、MLBでは我がイチロー選手が自己新の24試合連続安打を続けている。打席を待つ間、ベンチの中で座りながらもストレッチに余念がない。そんな姿に感動するのは私だけではないだろう。
続いていると言えば、私のブログ。ホームページの一部を簡単に更新するために始めて今日で一周年。なんと一年間で94度更新しており、4日に一度、月平均7度強だ。内訳は、現場レポートが45%で一番多く、次に活動レポートで18%。以下、日常風景や本や映画の話、旅行やエコ建築、コミュニケーションと続く。建築の周辺というテーマを扱うのは変わらないが、私自身の立ち位置を探る定点観測のようなものになるといいと考えている。
最近、ブログ見てますよ。と声をかけられることが多くなった。楽しみに見ていただいているのは嬉しい。これからも日々折に触れて発信して行こうと思います。
写真は、「西宮の沢の家」基礎コンクリート部の埋め戻し前の現場。アンカーボルトがしっかりセットされた基礎は、外断熱している。

土曜日, 5月 26, 2007

施主のコミュニケーション


設計中や施工中、どうしても実物を見てもらう必要がある。その場合、ショールームを持たない私は完成した住宅におじゃまして見学をさせていただいている。今日26日は、設計中のお施主様と一緒に、札幌市内の近作を廻った。ちょうど「西宮の沢の家」のコンクリート打設と時間が重なったが、昨日現場で必要な打合せを済ませているので問題ない。コンクリート打設後の状況を夕方に再確認した。
設計中のお施主様は、図や写真などで十分説明を受け正確に理解されている場合、実際に空間に触れると理解が確信に変わるようだ。とくにディテールや素材感などの理解は、実際に見て触るのが近道である。久しぶりに入居後の住宅に向かう時、私はお施主様と顔を合わせるが楽しみだ。お連れしたお施主様との会話のなかで、住んでみての貴重なご意見をかならず聞くことができるからだ。設計者は常に謙虚に耳を傾けなければならないのだ。「美しが丘の家」のOさん、「大谷地の森の家」のHさん、本日は有難うございました。写真は見学中のNさんご家族。

火曜日, 5月 22, 2007

太陽のめぐみ


今日22日は太陽が出たので、昼休みにミニ噴水を庭の水ガメに浮かべた。昨年購入したもので、オモチャのようだがなかなか楽しい。本体の表面に貼り付けてある太陽電池で中のモーターが駆動する仕掛け。なんといってもソーラーパワーを利用するところが気にいっている。

日曜日, 5月 20, 2007

散歩道の風景


屋根は赤い長尺カラー鉄板の蟻掛葺き、壁はモルタル塗白ペンキ仕上げ。手前に見える付属の物置らしき建物は、屋根壁共に亜鉛引き鉄板の丸小波板張り。近所に古くからある幼稚園の裏通りの風景である。屋根を突き抜けているのは煙突。石炭や薪を燃料にしていたころの名残だ。降った雪をさらさら落とすためのつるつる表面の屋根に、白い煙突が反射している。暖房設備や屋根雪の取り扱いの変化を言うまでもなく過去の風景だが、なぜか心をなごませる。

木曜日, 5月 17, 2007

配筋検査


木造住宅布基礎の配筋仕様は、住宅金融公庫工事仕様書の標準配筋図により、横筋は上下主筋D13、その他の横筋と縦筋はD10、すべて300mm間隔としている。見えないところ、隠れてしまうところはしっかりと注意を払う。私たちの地道な監理作業のひとつである。写真は、「西宮の沢の家」の現場。杭の偏芯部は上端主筋D13を2本とし強度を補強している。

月曜日, 5月 14, 2007

捨てコンクリート(leveling concrete)


「西宮の沢の家」の現場は、杭頭処理の後、捨てコンクリート打設。コンクリートが固まった後、墨出しを施工している。一部2階があるもののほぼ平屋に近い住宅なので、建築現場は少し大きめの印象がある。

建築用語には独特の表現があり、面白い。捨てコンクリートとは、彰国社刊「建築大辞典」によると、「構造上の意味はなく、この上に基礎の中心や型枠の位置などの墨出しをするために打つ。」とある。「捨て」とはいいながら、墨出しの役にたつ必要不可欠なコンクリートなのだ。

月曜日, 5月 07, 2007

北限の樹林


7日、「大谷地の森の家」で建築確認の完了検査を受けた。検査係員が到着するまでの間、目の前に広がる森の中を歩いてみた。散策路の案内標識によると、面積1.8ヘクタールのコナラの純林であり、コナラはブナ科の広葉樹で日本における生育の北限だという。周辺の市街地の住宅をはるかにしのぐ高さの巨木がうっそうと茂っている。「大谷地の森の家」を、木々の間から眺めた。かつてニューヨークのセントラルパークから緑地越しに摩天楼を眺めたことをふと想う。現場から戻り、ニューヨークヤンキースのゴジラ松井が日米通算2000本安打を達成とのニュースを知る。2000本はすごい数。この広い1.8ヘクタールの森でさえ、高木はどうみても2000本まで無いのだから。

月曜日, 4月 30, 2007

借景の森


「大谷地の森の家」が近々竣工する。現在、外構工事と並行して細部の仕上げ工事を施工中だ。キッチンに立つと、木陰に雪の残る森を正面に望むことができる。施主が切望したここにしかない光景が広がる。これから夏にむかって木々はいっせいに芽吹き、またたくまに枝は葉をつけ、かすかに落ちる木漏れ日が美しい緑の深い森となるだろう。実は、この住宅にとって森は室内空間の延長とも呼べるもので、無くてはならないもの。施主は、小さな森へのライトアップを考えているのだという。さらに森と住宅とが「つながる」きっかけを模索しているところである。

水曜日, 4月 25, 2007

着工前夜


札幌は、ここ数日好天が続いている。まるで初夏の陽気のよう。高気圧に押されるように、先週の風邪はウソのようにどこかに消えた。今日25日は、ことのほか外の空気がいい。写真の「西宮の沢の家」敷地では、まさに着工前夜である。確認申請も下り、施工者も決まり、あとは工事が始まるのを待っている。

火曜日, 4月 17, 2007

春の地鎮祭


15日は大安の日曜日、早朝9時から「西宮の沢の家」の地鎮祭に出席した。数日来の寒波の影響で、吐く息も白い。この住宅は、2世帯住宅で今秋の完成を目指す。地鎮祭は安全祈願祭と称したり、当日工事着手の近隣挨拶を兼ねたり、お施主様のご家族に挨拶したり、敷地の再々確認をしたりと様々な意味を持っている。従って、住宅建築にとって不可欠なプロセスであると考えている。週末の14、15日の二日間は、札幌~室蘭を2往復した。寒波と強行軍の疲れのため風邪を引いた。数日、この風邪が鎮まるように静かにしていようと思う。

木曜日, 4月 05, 2007

イチロー(ichiro)


日米大小を問わず野球観戦は私の楽しみのひとつ。そのうちの大リーグ野球が今週始まった。朝、仕事を始める前にBSで観るのは、北海道の最北稚内よりもさらに数百キロ北に位置するシアトルの試合。観客の様子が寒そう。偏西風や海流の影響で緯度の高いヨーロッパや北米は暖かいのだと高校の地理の時間に習った。あらためて地球環境はダイナミックだと思う。開幕試合、我がイチロー選手は天然芝に転がる内野安打で出塁、ホームを踏んだ。半ばあきらめ顔で白球を追いかけた敵捕手は芝に手を伸ばした瞬間、ヒットを確信して首を横に振った。同時にふっと大きく芝の香りをかいだようにみえた。無味乾燥な人工芝ではなく五感に訴える天然芝が、みる者の想像力を刺激する。写真は、数年前、江別市のもえぎ野で数名の建築家たちがデザイン協働した建売住宅。JRの車窓からよく見える。真ん中が私のデザイン。実はこの住宅、ペントハウスのイメージはイチロー選手の頭。向かって右側の住宅を設計したBASE4の仲間、建築家の平尾稔幸さんが撮影してメールで送ってくれた。この三軒の外観だけは、いわば野球のようにいくつかのルールを決めてデザインした。みる者を楽しませることができただろうか。

火曜日, 4月 03, 2007

コミュニケーション試行


4月は、新しい気持ちになれる。正月とは違って、この季節が春の訪れと共にあることと関係しているのだろう。とりわけ北国では時間と共に雪が融け、季節が移り行くのが実感できるからかもしれない。いまいくつか新しい試みをしている。そのひとつ9月からの北星学園大学での空間コミュニケーションの講義では、大学ホームページのシラバスにも書いているが、ストレートに建築空間のコミュニケーション論を扱う。昨年までの4年間は、建築計画論からのアプローチであった。いわばボールゾーンからの試行の結果、空間コミュニケーション論のストライクゾーンの輪郭が浮かび上がってきたといっていい。秋の開講までによい準備をしたいと思う。準備をすることもまた楽しみである。講義では、JIA北海道支部発行「建築家カタログ第3集」を推薦図書としている。写真は、同カタログの私のページを再構成したもの。どのように表現したら伝わるのかをいつも考えている。

火曜日, 3月 27, 2007

東京ミッドタウン(Tokyo midtown)


週末、東京へ行ったついでに、昨年夏に建築中の現場を見学した六本木ミッドタウンに立ち寄った。完成した姿をみておきたいと思ったからだ。26日はちょうどプレス内覧会の日だった。そのため新しい美術館などの内部には入ることができなかったが、外観だけは眺めることができた。いつも思うことだが、完成した建築物はとても美しい。しかし建設のプロセスを知るものとしては、建築現場の荒々しくもあのむせかえるような活気がどこにも感じ取ることができないのは少し寂しい。昨日までこの場にいたおびただしい数の施工者達は、大役を終え安堵の表情をヘルメットの下に隠し次の現場へ無事旅立っただろうか。ここでは今、テレビで見覚えのある女性アナウンサーとカメラクルーが取材を始めようとしている。きょうからは、ここを訪れる人々とここで迎える人々がこの場を作っていく。

金曜日, 3月 09, 2007

屋根からの眺め


足場は高さ7mを超えている。風は吹いていない。数日前に30数メートルの瞬間最大風速を記録した後だけにちょっと怖いが、現場の足場に上るのは嫌いではない。というのも、視線の変化によって風景が変化して見える楽しみを私は知っているからだ。ガルバリウム鋼板屋根下地のガムロン防水シートの施工を確認した後は、冬の「大谷地の森」の景色を眺めた。

水曜日, 3月 07, 2007

住宅展


札幌市中央区南2西2ほくせんビル4階にある「ほくせんギャラリー・アイボリー」で、「北海道の建築家による住宅展」が11日までの会期で始まっている。仲間の建築家たちの展示パネルが、ギャラリーの白い壁に色とりどりに並べられた。模型や写真などに様々な工夫がみられエネルギーを感じる展覧会。写真は、「この地に暮らす。」と題した私の展示風景。リアルな敷地に建っている住宅、を表現。11日(日曜日)14:00から「自然に暮らす」というテーマでフォーラムがあり、私もパネリストの一人として参加します。入場無料。

日曜日, 3月 04, 2007

ホーム(home)


3日、4日は札幌市内でのASJイベントに参加した。今回の会場は、北24条の札幌サンプラザ。実は、私の高校生時代の通学路にあたる場所であった。いわゆるホームである。とはいっても何十年も前のこと、まわりの建物も風景も昔の面影はない。にもかかわらず、懐かしい。街のどこかに記憶を呼び起こす痕跡がある。ほっと安心できる、これがホームの強みだ。写真は、私の展示風景。今回来場のお客様から、私の「ホームページを見てますよ」という声をかけていただいた。たいへん嬉しい。

日曜日, 2月 25, 2007

建方(erection)


一般的に木造では、土台・柱・梁・小屋組みの組立てを建方(たてかた)という。「大谷地の森の家」の現場では、雪の晴れ間をねらって作業が進行中だ。今回、柱や梁は北海道産のカラマツ構造用集成材、一部フィンランド産針葉樹構造用集成材を使用した。また床下地についても北海道産のカラマツ構造用合板を用いた。プレカット工場で加工を確認した木材が現場で正しく組み立てられている。もちろん全ての素材が、強度等級、ホルムアルデヒド放散量等の基準をクリアーしている。

金曜日, 2月 16, 2007

土台(sill)


土台(どだい)、なんという重たく響く言葉だろう。ちょっと、本棚に手を伸ばして意味を確認してみると。柱から伝えられる荷重を基礎に伝える役割を果たす横材、(鉄筋コンクリートで作られた)布基礎にアンカーボルトで緊結され、(中略)防腐性のある材料を使用する。(彰国社建築大辞典)また、物事の基礎。基本。元来。(略)(三省堂大辞林)とある。ドダイ無理よ、と言われればもともとダメな話。とにかく、これは大事なのだ。写真は、大谷地の森の家。

土曜日, 2月 10, 2007

養生上屋


単管組ビニールシート養生上屋の屋根に突き刺さった筒先を通し、ポンプ車から圧送されたコンクリートが打設されている。昨日、石狩市花川の現場で基礎コンクリート工事を施工。工程上の都合で厳寒期のコンクリート打設となったのだが、躯体コンクリートの品質確保には細心の注意が払われている。

金曜日, 2月 09, 2007

幕間(seventh inning stretch)


もうすぐ再開予定の現在冬期休業中の現場がある。いまは、再開に向けての準備に余念がない。私の好きな野球で言えば攻守チェンジの時間、それもアメリカメジャーリーグで言うところのセブンスイニングストレッチの時間であろうか。あの陽気な「私を野球に連れてって」の大合唱が聞こえてくるようだ。この歌は、1908年に初めて発表されたと言う。今年で99年目の超ロングヒットソングとういわけだ。野球狂の女性が、2対2の同点でこれからホームチームの活躍を応援する歌だという。いい建築を作ろうとしてあれこれ思案しているこの季節の私たちに似つかわしい歌ではないだろうか。「私を現場に連れてって」と。

金曜日, 2月 02, 2007

雪だるま(snowman)


半年雪に閉ざされる北海道で、冬の季節をどれだけ有効に過せるか。私たちにとってはとても大切な問題だ。室内をおおきめにする。できるだけワンルームにする。天井も低いより高いほうがいい。自然の採光を大切に。などなど。室内で過す時間の質と量を考えなければならない。もちろん、戸外での楽しみも。写真は、隣家のご主人がお孫さんのために毎年作る雪だるま。なかなか表情豊かだ。雪を運ぶ北風が吹く北西方向を誇らしげにながめている。

木曜日, 2月 01, 2007

凍土


2月、今日から新しい現場が始まった。敷地は札幌市の隣、石狩市の花川。200ミリほど凍り付いている表土を砕いて、基礎工事をしている。この時期、厳冬期に着工することが決まっていたために敷地の雪を取り除いていた。表土が直に冷気に接している状態が続いていたのだ。その結果、土の表面を凍らせてしまった。雪に適度な断熱効果があることは経験的によく知られていることで、皮肉にも自然に雪が堆積している場所の土は凍結していないという。

水曜日, 1月 17, 2007

耐用年数


20年前に取り付けた自宅の樹脂製レバーハンドルが折れた。頻繁に使用するトイレの片開き扉に取り付けられていたもので、きっと何かの拍子で異常な力がかかったのだろう。このタイプのハンドルはデザインが気に入りそして廉価だという理由で採用した記憶がある。当時工事を担当してくれた建具屋さんからは、すぐに壊れるからよしたほうがいいよと言われた。その一言がずっと頭に残っていて、いつ壊れてもおかしくはないといつも自分自身に言い聞かせて使用していた。同じものを希望した施主に対しても、建具屋さんからの受け売りで、これは壊れやすいそうですよと私は説明した。そう言われると、きっと丁寧に扱う気持ちが芽生えてくるのかもしれない。幸いこれまで一度もトラブルはなかった。20年というと、1日の使用頻度を15回として、約10万回以上の使用に耐えたことになる。ご苦労サンといっていいだろう。ちなみに、現在の設計には、壊れにくい金属製のものを使用している。念のため。(写真右)

火曜日, 1月 09, 2007

等身大スケールⅡ


昨日は成人の日の祝日。事務所に使用している建物が、年末にちょうど20年を過ぎた。人間で言えばめでたく成人である。建物全体は共同住宅で、詳細はjt(住宅特集1986年12月号 、SHINKOTONI HOUSING)に掲載されているのだが、その一部を事務所として使用している。
ところで、事務所のボールト天井には天井高さを示す目印をつけてあり、高さを実感するスケールとなっている。たびたび打合せ時に活用し、また毎日の設計時の確認用としても重宝している。私の場合、手を伸ばすとちょうど2150mmの位置に届く。したがって手を伸ばせば、どこでも天井高さをほぼ把握できる。
さて、コンクリートの表面は20年間全く変化していない。それは外断熱工法の利点と言うものだろう。今年は、少しまとめて外断熱(鉄筋コンクリート造等)をこの欄で取り上げる予定である。

金曜日, 1月 05, 2007

等身大スケール


今日から仕事始めです。
JICAでアラビア半島のイエメンに行っている知人にメールする。その知人の案内で砂漠の摩天楼シバームを一度見てみたいと思っていたが、近々帰国が決まっている。せめてもと、グーグルアースの航空写真を見てみるも感じがつかめない。以前お世話になったボストンの宿屋の女将に航空便を出す。葉書は70円切手一枚で届く。今年は、松坂効果を期待していることだろう。ミラノに短期留学中の施主へ出したメールは読んでもらっただろうか。などなど考えながら、地球上の距離感やスケール感が頭の中でどんどん変化していくのを感じているのは私だけではないだろう。しかし、である。私たちが取り組むべき建築は、身近な目の前に等身大にあるの。今年も、ひとつひとつの仕事に真正面から取り組んで、満足のいく建築をつくりたいと思う。
写真は、昨年末にJIA北海道支部から発行された「建築家カタログ~北の住まいを建築家とつくろうVol.3」。北海道で仕事をしている私たちの建築家仲間が載っている。

木曜日, 1月 04, 2007

水まわり(sanitary)


あけましておめでとうございます。仕事始めは明日からだが、きょうはこれから始まる仕事の準備という意味もあり、衛生機器会社の企業誌を10数年分積み上げ、浴室やトイレなど「水まわり」関連資料を一日中ゆっくりと拾い読みした。一度は読んでいるはずなのにすっかり忘れている。だから初めて読むときのように面白い。「忘れる」と言うのもなかなか味なものだ。
建築家・前川國男邸の水まわりはいわゆる3in1、その新しさに驚いたが、これは昨年見学した。建築家・土浦亀城邸の真っ白いタイル張りの白い陶磁器に包まれた空間にモダニズムデザインの本質があり、また実用的な意味だけではなく精神的な意味でも清潔感がキーワードだと藤森照信氏が言う。コルビュジェのサヴォア邸の水まわりは光が満ちていて美しい、正月のテレビ番組でチラッと観た。
「水まわり」は住宅だけではない。現在、あるオフィスビルの環境改善策としてトイレの改修を計画中。限られた予算で満足を追及することになる。いま「水まわり」は、あらためて住宅のもっとも大切な部分でもあることを再確認している。
我輩はネコ(写真は自宅で飼っている雄ネコ)、いや建築家である。今年もこの目でしっかりと建築の仕事の周辺を伝えていきたいと思っています。

木曜日, 12月 28, 2006

越年準備


上屋を架けてコンクリート打設した「大谷地の森の家」の壁の型枠をはずし、地下部分の一部を埋め戻した。スラブは土台のアンカーを突き出したブルーシートで表面を覆い、雨や雪から躯体を保護している。この状態で、1ヶ月ほどさらに養生期間を置く。ここからは、すっかり葉が落ちて見通しが良くなった森が見える。すばらしい景色にしばらく見とれてしまう。カラスの鳴き声だけが響いている。竣工時の1階居間からの風景予想ができた。

水曜日, 12月 27, 2006

師走の雨


27日、この時期には珍しく一日中雨が降っている。道路の轍(わだち)は、氷の谷間に水がたまり、次に寒波がくると路面が危険な状態になりそうだ。午後から、対向車に注意しながら、9月に引き渡した「美しが丘の家」のアフター工事の確認に向かった。懸案事項は全て完了していた。施主さんから、「とても快適」という一言をいただく。ひと安心である。写真は、屋根の雨水を勢いよく落とすステンレスアングル製の樋。

木曜日, 12月 21, 2006

上屋(うわや)


「大谷地の森の家」で1階床スラブの配筋検査を行なった。土曜日のコンクリート打設に備えて、最悪の天候を予測して降雪保護のシート上屋と採暖の準備をし、当日は万全の態勢で臨む。

非常勤

今日、札幌市厚別区にある北星学園大学で今年最後の講義をした。1コマ90分、毎週1コマ、延べ14週で1260分の授業を、私は非常勤で通っている。この間、プレゼンテーションに用いたパワーポイントの容量を見てみたら、208MBだった。これが多いのか少ないのかはわからないが、1枚のスライドは500KB程度の画像が主だから、400枚以上のスライドを写したことになる。毎度、その一枚一枚にコメントを入れた。今日の授業では、後半30分、一人ひとりの名前と顔を確認しながら質問や感想を聞いた。私の講義テーマは「空間コミュニケーション」だが、今年内容は建築空間の紹介に終始している。それは、基本となる空間をまず理解してもらおうと考えたからだ。途中、全員で建築の小模型制作も実施した。今あらためて思っている。建築空間は体で捉えるもので、建築空間は風土や構造や環境や社会を反映しているものだと。

月曜日, 12月 18, 2006

DIY


住宅は、住み手が使い込むもの。日々の暮らしに必要な手間をかけなければならないもの。やってみるとこれがなかなか楽しいものだ。昨日午後、庭への出入り口に雪止め柵を手作りした。例年は、スタイロフォーム100ミリ厚の板をガラス面に立て掛けて済ましていたのだが、庭からの景色が悪いので、思い立って日曜大工を試みた。まだ、塗装仕上げが残っているものの満足している。私のささやかなDo it yourself である。

土曜日, 12月 16, 2006

仕事


昔読んだ本に、「仕事とは他の誰かに代わって行なう代理行為であり、そのために施主と社会への責任感が育まれ、そのための技術や倫理の研鑽が要求される。」と言う意味のことが書いてあった。いまでも正論だと思う。私が参加しているJIA(日本建築家協会)の北海道支部住宅部会では、毎月のように何がしかの例会を開いて、職能集団としての研鑽に励んでいる。昨日、忘年会を兼ねて今年最後の例会があった。今年の、住宅賞の受賞者のレビューをメインに互いの意見を交換した。気がつくと予定の時間はあっという間に過ぎていた。私も、今年一番感動した映画「マイアーキテクト」について勝手気ままに作り込んだスライドを披露した。そのなかで私は、設計と監理のプロつまりは建築家の仕事の中身は、広く深く困難であると同時にとても楽しいものでもあることを表現したかった。写真は、私が32年前に訪れたバングラデシュの建築現場。この時、カーンの建築に初めて出会った。

木曜日, 12月 14, 2006

鉄筋組み立て


時には一晩で数十センチも積雪があるこの時期、「大谷地の森の家」現場では天候が回復した合間を縫うようにシート養生をしながら作業が進められる。積雪は、ここ数日の暖気で消えた。現在、地下車庫部分の鉄筋組み立て作業が進められている。偶然この日は、現場で施主のH氏と出会う。天気が良いので現場を見に来たという。工事の進捗状況に大変満足の様子で、完成が今から楽しみだと言う。来週の定例打合せ日程を再確認して現場を後にした。

月曜日, 12月 11, 2006

美術館Ⅱ


先々週12月1日、建築学会北海道支部の作品発表会があった。私自身は、年一作限定で発表し始めて今年で16年目になる。いつも、その年の設計の最高のものを見せたいと、また誰にもわかりやすく伝えようと思っている。会場の北海道立近代美術館は、故太田實先生の代表作。私が独立して間もない頃、太田先生に私の自宅と当時建築中のブロック住宅を見ていただいたことがある。「ライトみたいだね」と茶目っ気たっぷりに仰った。思ってもみなかった一言であり、それから私はフランクロイドライトのブロック住宅を書物でよく見るようになった。写真の今回発表した「白い陸屋根の家」は、ライトのブロック住宅のひとつがプランのヒントになっているものだ。

美術館


9日土曜日、午後から「モダン建築の夢」展を見た。三岸好太郎美術館はもう何年来のご無沙汰だった。展示は、山脇巌が設計した三岸好太郎のアトリエを基点として、そこからバウハウスや同時代の日本の建築家たちを俯瞰する、図面と模型と写真資料で構成する見ごたえのあるものであった。特に興味を持ったのは、土浦亀城自邸だった。70年代、「都市住宅」で磯崎新さんとの対談記事を読んだ時から気になっていた。キッチンの黄色の戸棚など、色彩が鮮やかだ。磯崎新さんも影響を受けたのだろうなと勝手な想像をした。その他にも、藤井厚二の聴竹居は、隅々まで神経が行き届いている建築家の集中力の凄さを感じた。そして石本喜久治自邸。石本喜久治没後10年、私が石本事務所に勤め始めた。年かさの先輩から話を聞いてはいたものの写真を見るのは不覚にも今回が初めてだった。

火曜日, 12月 05, 2006

庭球場


地下鉄の幌平橋駅近くで、久しぶりにBASE4のメンバーとビジネスランチを食べた。すぐそばにテニスクラブがある。ここは、その昔、職場の先輩に誘われて初めてテニスをした場所。現在はどうかわからないが、かのウィンブルドンも顔負けの厳格なクラブで、身につけるものは白いもの意外はだめという規律があった。私のテニスの腕前のほうは昔も今も進歩なしだが、懐かしい。雪に覆われたコートに球音が聞こえてくるようだ。テニスコートと緑と雪、絶妙な取り合わせが面白い。

金曜日, 12月 01, 2006

杭(くい)


先日、「大谷地の森の家」で、杭工事が行なわれた。さっと雪が地面を覆っていたが、翌日にはすっかり融けてしまう。これからは空模様をにらみながら工事工程が組まれることになる。初冬、この時期の雪は工事の背中を押すように降るのである。

木曜日, 11月 30, 2006

室蘭


週の初めの2日間、室蘭にいた。ASJイベントニ参加のためであった。写真は、私の展示風景。室蘭は私にとって幼少時代の大半と、青春時代の全てを過した街として忘れることはできない。40年~30年前のこの街は活気にあふれていたように思う。製鉄所の巨大煙突から噴出す煙で、街中が鉄錆色に染まっていた。そのセピア色の風景を誰もが自慢げにしていたように記憶している。今、この街の風景は自然の色を取り戻しているように思う。社会が大車輪で突っ走っているときには誰もブレーキを踏まないものだ。今、たとえシャッター街と揶揄されようと、この街は夢から覚めて自身を見つめる時間を獲ているのだ、とぼんやり考えた。

水曜日, 11月 22, 2006

電飾


週一で通っている北星学園大学の講義が終わって外に出ると、まだ4時過ぎだというのに真っ暗だ。さきほどふりだした雪が風に舞っている。人影のないキャンパスで樹木がクリスマスツリーの電飾をまとって浮かび上がる。思いがけなく出会った美しい光景に、立ち止まった。北国の冬はこれがあるからやめられない。一瞬寒さを忘れる。

月曜日, 11月 20, 2006

地鎮祭


大谷地の家、の地鎮祭があった。幸運にも空は快晴。大谷地の森を背景にして、敷地が一段と映えている。これから来年の春まで続く工事期間中の無事を参加者全員で祈念した。

土曜日, 11月 18, 2006

冬に備えて


17日は天気予報では雪が降るということだったので、昨日あわてて冬用タイヤに取り替えた。私がいつも利用しているディーラーの整備工場では、タイヤ交換のついでに車体の点検整備をセットでしてくれる。ワイパーも冬用に交換した。寒冷地北海道ではこうした準備が不可欠である。タイヤ交換ではいつも待たされるのだが、北海道では特別なことではない。誰もが同じように考えているということだ。17日朝の自宅庭の写真。例の番号ポータビリティを利用して取り替えた携帯電話で写した。

木曜日, 11月 16, 2006

岩見沢(iwamizawa)


この冬の初雪が降った土日の二日間、岩見沢駅前でのASJイベントに参加してきた。岩見沢駅舎のオープンコンペがあったのはもう2年前になる。残念ながら私たちの案は陽の目を見ることがなかったが、当選案による駅舎工事は工事中で、数年後にはグランドオープンだという。聞くところによると、駅舎を中心とした駅前市街地活性化とともに、北海道教育大学の芸術体育分野が岩見沢に再編統合されることによる街づくりを展開すると聞いた。芸術や建築が街づくりの起点になる。写真は、ASJ岩見沢での私の展示風景。

火曜日, 10月 31, 2006

彫刻が街にある(sculpture in the city)


このところ、建築学会北海道支部作品発表会、JIA住宅部会建築家カタログ、JIA優秀建築選2006、そしてBASE4ホームページなどのプレゼンテーションのために時間を割かれている。年賀状の写真もそろそろだろう。それらに、指定サイズのプリント写真やポジのデュープを使う必要があり、大通公園近くの専門写真店に何度か通った。今日はその帰り道、イサムノグチさんのブラックスライドマントラに立ち寄った。夏の暑い盛りであれば無邪気に遊ぶ子供たちの歓声が聞こえるのだが、寒く太陽も顔を隠している今日は誰もいない。それにしても、街に彫刻があると言うのはそれだけで心が暖かくなるものだ。

月曜日, 10月 23, 2006

想像力

「地下鉄に乗って」という映画を観た。浅田次郎の原作で、過去へタイムスリップする物語だ。主人公が地下鉄のホームで出会うかつての恩師の存在感が目に焼きついていた。キャストの中に、田中泯の名前を見つけた。あの舞踏家の泯さんである。30年ほど前、竹山実さんの札幌アトリエインディゴで、舞踏を観た鮮烈な記憶がよみがえった。局所を包帯でぐるぐる巻きにしただけのほとんど全裸で踊るという、それまで見たこともない前衛舞踏であった。その数日後、たしか市民会館でのワークショップで再会した。偶然、トイレで隣り合わせになり言葉を交わした他愛もない記憶。私の頭の中もタイムスリップしてきた。小説や映画や建築、人間の想像力ほど興味深く、感動を呼ぶものはない。

土曜日, 10月 21, 2006

札幌デザイナーズウィーク(sdw)


NPO法人北海道デザインネットワークと北海道新聞社が主催し、JIA(日本建築家協会)北海道支部などが協力、北海道や札幌市や地元放送局などが後援する、デザイン運動週間が始まっている。私たちの事務所は昨年に引き続き2度目の参加。具体的には、JIA住宅部会のパネル展参加と小冊子への広告掲載である。また、受付スタッフとして半日会場に張り付く。こうしたイベントで久しぶりの顔を発見したり、初対面の人との出会いもまた楽しみである。写真は、リノベーション(再生)をテーマとしたJIA展示風景。手前に私たちの事務所の出展パネルがある。

水曜日, 10月 18, 2006

ザ.チェアーⅡ(the chairⅡ)


事務所で15年使っている事務椅子が、とうとう悲鳴を上げた。座面がすり切れたのだ。先月の上京の折、六本木アクシスビルにあるこのメーカーのショールームでファブリックを注文し、札幌に戻ってから椅子を宅急便で茨城県にある工場へ送りだした。その椅子が真新しい座面をつけて、17日に事務所に戻ってきた。体になじんでいるものだから、まだまだ使えるのがうれしい。早速、メーカーの担当者に到着と喜びそして感謝を、メールした。 写真は、ウィルクハーンFSライン、1980年代の傑作事務椅子といわれている。我が事務所の宝もの。

金曜日, 10月 13, 2006

SS式地盤調査


朝一番に、来春着工予定「西宮の沢の家」の地盤調査に立ち会う。いつものスウェーデン式サウンディング試験による地盤調査である。すでに近隣の地盤調査資料により、ある程度の目安は得ているものの、いまだかつて建築物が建った歴史がない場所であるから、念のために調査をしなければならない。写真は、自動回転式の装置である。従来の手回しによる方法に比較して作業は楽そうであるが、この方法の特徴であった「じゃりじゃり音がしましたから礫混じりの砂層です」というような、検査者の手や耳に伝わる振動や音からの経験分析が期待できそうもない。しかし、仕事の効率化や作業の均質化は当然でもあり、これから数値的な正確性を期待すればよいのだろうと思っている。

木曜日, 10月 12, 2006

冬の備え

10月、北海道では今月末に初雪が降る。だから、そろそろ住宅も身支度をはじめる。冬の備えの季節である。かれこれ10数年前に設計した、新琴似の2世帯住宅で建物周りのチェックを依頼された。設計者の目で点検し、冬に向けて具合の悪いところがあれば修繕計画を立てて欲しいと言う趣旨である。実は昨年、駐車スペースを増築したばかりであった。一年ぶりに訪れ、なつかしく歓談した。今回の場合のように、定期的にメンテナンスすることは、住宅を長持ちさせる秘訣かもしれない。

土曜日, 10月 07, 2006

時間分母


40年来の高校時代からの友人H君は、万年幹事として仲間内で知られている。彼の音頭とりで、喜寿になった恩師S先生を囲んでのクラス会があった。最近は、子供の話や孫の話もそこそこに、昔の記憶を遡る話題がもっぱらである。当然の事ながら、記憶は一人ひとり違っていてそのギャップがおもしろい。ただ共通しているのは、加齢とともにまるで加速度がついているように時間が早く過ぎることである。これは友人からの受け売りなのだが、年齢を分母とすると一年の重みは加齢とともに小さくなる。つまりはだんだん一年が早く過ぎてしまうと言うことだ。限りある時間を大切に、そう思ったクラス会であった。もちろん万年幹事のH君と参集したクラスメートに感謝である。写真は、先日上京した折の上野・芸大美術館前の風景。

木曜日, 10月 05, 2006

選ばれてこそ建築家(my architect)


10月3日夜、東京にいた。例の第13回空間デザイン・コンペティション作品部門入賞の授賞式に出席するためである。私がいただいたのは佳作賞ではあるが、ともあれ数百点の応募から選ばれたことは幸運だ。めったにないことなので、先月再会したばかりの旧友と再び祝杯をあげた。もちろん蕎麦屋にきまっている。今回は恵比寿のいまどきの店。4日朝、授賞式会場近く皇居半蔵門あたりを散歩中、目の前を雅子妃の車列が通り過ぎる。一瞬目が会ったように思ったのだが少々酒気帯びである私の錯覚だろう。授賞式後、いつか見たいと思っていた小金井公園内にある前川國男邸を見に行く。質素なつくりだが強い。個室に立てかけてある前川さんのポートレートを拝む。授賞式スピーチで数々の建築家を見てきた元新建築編集長の馬場さんが「選ばれてこそ建築家だ」と言ったのを思い出す。

月曜日, 10月 02, 2006

竣工引渡し(completion)


先月末、「藤野の家」と「美しが丘の家」が同時に竣工した。竣工への手順は、施工者による自主検査と設計事務所の完了検査によるダメ出しと補修等があり、前後して確認検査機関の完了検査が終わってようやく施主へ引き渡される。お施主さまへの引渡し当日は、施工担当者全員が集合した。個別の取り扱い説明などを数時間にわたり入念におこなった。やっと人が住む器になったという実感があるが、器の真価が問われるのは実はこれからだ。手が離れ、引き渡したという安堵感と同時に緊張感がみなぎる一瞬である。 写真は「美しが丘の家」正面外観。